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第401話
もし、正和さんがその気になるんだったら、このキスも口実になるから良いかも。なんて、少し馬鹿げたことを考えてしまって、違う、違うと頭を左右に振った。
そんなことより、来週の火、水、木とある学年末テストをなんとか乗り切らなければ。借金返済で忙しかったとは言え、遅れを取り戻さないと正和さんにも呆れられてしまう。それに何より、高い学費を払ってくれている彼に申し訳ない。
……よし。
確実なのは古典と現文だから、それは満点とりたい。その二つを勉強した後は苦手な化学をやろうと決めて、夕飯までの四時間、一生懸命勉強した。
*
翌日からは普通に学校へ行って、いつも通り授業を受け、放課後は正和さんに勉強を見てもらっている。正和さんとも前より仲良くなったし、体調もすっかり良くなって、とても幸せ……なはずだった。
けれど、『授業料』のせいで、欲求は日増しに募り、悶々として過ごす日々に凄く不満を抱えていた。
「なーにイライラしてんの?」
「なになに、欲求不満?」
そんなだから、学校にいるときも態度に出てしまい、笠原と勇樹にからかわれてしまう。思わず二人を睨みつければ、クスクス笑われた。
「おーこわ。図星?」
「ほら、これ。純のタイプの子載ってるよ~」
そう言って勇樹が机に広げたのはエロ本で、顔がカァァと熱くなった。黒髪の際どい水着を着た女の子の写真に、胸がドキドキして顔を逸らす。
「照れてる~」
「……純って今でも女子がタイプなんだ? てっきり彼氏一筋だと思ってた」
拓人まで会話に参加し始めて、叫び出したい衝動を抑えるように唇をぎゅっと噛む。
別に、女の子の体でムラムラしたりはしないけど、イケナイものを見ている気がして落ち着かなかった。
「いや、そうじゃないけど……てか、エロ本とか学校に持ってくるなよ」
「え~、真面目ー?」
文句を言う勇樹にエロ本を突き返せば、面白くなさそうにロッカーにしまいに行った。
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