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第403話
「……ねえ、俺のケースなんかいじって何してるの?」
カァァと頬が火照って、それを隠すように手の甲を口元に当てて顔を背ける。わかっているくせに。そんなことを聞くなんて、正和さんは本当にいじわるだ。
視界の端に映った彼は、ニヤニヤと揶揄うような笑みを浮かべて、こちらへ歩いてくる。
「玩具探してたの?」
「っ……だって」
「ふふ、鏡の部屋にあるから好きなの使っていいよ。おいで」
そう言って正和さんは手招きするけれど、こんな恥ずかしい姿を見られた挙げ句、これから一緒に玩具を取りに行くなんて嫌だった。
「――――」
「じゅーん、おいで」
けれど、そんな風に優しく呼ばれたら、俺は逆らえなくなってしまう。なんでか分からないけど、正和さんのその声で呼ばれると、魔法がかかったみたいに、彼に従順になってしまうのだ。
軽く手を引かれて立ち上がり、そのまま正和さんの後ろをついていく。ドキドキしながら鏡の部屋に入ると、正和さんは棚の引き出しを指差した。
「開けてごらん」
言われるがまま、スッと引き出しを引っ張ると、そこには厭らしい玩具がずらりと並んでいて、思わず喉をごくりと鳴らす。こんな所に、こんなにたくさんしまってあったなんて知らなかった。
「どれがいい?」
そう言われて、様々な色や形をした玩具を一通り見たけれど、どれも無機質で、改めて見ると虚しくなってくる。
「……正和さんと……したい」
「だーめ。旅行まで我慢って言ったでしょ」
唇をぎゅっと噛んで下を向く。
「……だって、おれ」
「うん?」
「ひとりじゃ、イけなくて」
「……あれから出してないの? 二週間以上経つよね」
正和さんに大量の媚薬を飲まされて病院に行った日以来、そういう行為は全くない。
「っ、だって、あれから今日初めてしたけど、全然ダメで……おれ、おれ……!」
「ふーん。俺じゃないと満足できなくなっちゃった?」
正和さんは冗談めかして言うけれど、本当に自分ひとりじゃどうにもならなくて、こくりと頷く。すると、彼は何かを考えている様子で顎に手を当てた。
「うーん、玩具使ったらイけるんじゃない?」
「ソレは……やだ」
強請るように正和さんの服をきゅっと掴んで、彼の顔を見上げれば、彼はスーッと目を細めて楽しそうに口を開く。
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