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第406話
射精したからか頭がスーッと冷めてきて、途端にさっきまでの行為が凄く恥ずかしくなった。
「上手にイけたね」
正和さんは子供を褒めるみたいにそう言って、頭をぽんぽんと撫でてくる。
あんなにイけなかったのに、正和さんにちょっと触られただけでイってしまうなんて、本当に正和さんなしではダメになってしまったんだろうか。冷静に考えたら少しだけ不安になったけれど、そんなことはすぐにどうでもよくなる。
一度出しただけでは収まらず、火照ったままの体は奥が疼いてたまらなかった。
「正和、さん」
「うん?」
「正和さんの……ほしい」
早くこの熱をどうにかして欲しい。心も体も大好きな正和さんでいっぱいに満たされたくて、期待で打ち震える。
――それなのに。
「可愛い。……でも旅行まで我慢だよ」
予想外の言葉に固まって、見開いた瞳にじわりと涙が浮かんだ。
「っ、一人でするとこ見せたのに……!」
手をぎゅっと握り締めながら、話が違うと訴えかければ、正和さんは俺の額に優しくキスを落とす。
「するとは言ってないよ。それにちゃんと出せたでしょ」
「――――」
……こんなの、あんまりだ。
思わず唇をぎゅっと噛み、俺の頬を撫でてくる手を掴んで彼を睨み付ければ、彼は困った表情で苦笑した。
「やっぱり……っ」
「なに?」
「……やだよな。……そりゃ、したくない、よな」
こんなこと言いたくないのに、言わずにはいられなかった。
旅行まで、と言っても、この様子ではその頃もできない気がするし、そもそも彼にする気が全くないのだ。以前の彼なら、俺のこんな姿を見て落ち着いていられるはずがないのに。
「――――ごめんね。したくないっていうか、できない」
正和さんは、申し訳なさそうにそう言って、俺の手をそっと握り直した。
できない……ってことは勃たないとか? いやでもキスで勃ってたし。
体は反応しても俺とするのは嫌なんだろうか、なんて考えたら涙がポロポロ零れ落ちた。
「なんか勘違いしてるでしょ」
「勘違いなんか……っ」
「別に純のせいじゃないよ」
「じゃあ、なんで……!」
咎めるように声を荒げれば、正和さんは言葉を詰まらせる。何かをためらっている様子の彼をじーっと見つめれば「本当は言いたくなかったけどさ」と話を切り出した。
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