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第408話
「そっか」
安心したら全身の力が抜けて、いつの間にか体の熱も収まっていた。あと一週間、そう思えばなんとか乗り切れる。
「不安にさせてごめんね」
そう言って頭を優しく撫でてくるけれど、その手は先ほど俺のアレを触った手で……、思わず顔を顰めれば正和さんは苦笑した。
「お風呂入ろっか」
「……うん」
ティッシュで腹部を拭いてもらい、立ち上がろうとしたら横抱きにされて、そのまま浴室へ連れて行かれる。この体勢は恥ずかしいけれど、正和さんがなんともない顔をしているので、俺も平然を装って彼に身を任せた。
「夕飯は餃子だよ」
「知ってる」
「あ、見てたの?」
「っ……いや、たまたま」
「ふーん。なんで声かけてくれなかったの?」
「だ、だって忙しそうだったから」
言い訳するように慌てて言えば、正和さんは目をスーッと細めて、ニタリと口角を歪めた。
「本当はひとりでヤラシイことするから確認しに来たんでしょ」
「っ……ち、違っ」
「違うの? 俺、嘘は嫌いだなー」
はむはむと耳を甘噛みされて、空中で手足をばたつかせる。
「ぁっ……そう、だけど……いいじゃん、別に」
「ふふ、悪いとは言ってないよ。俺のオモチャ箱漁ってるえっちな純が見れたし」
「~~っ」
カアアっと赤く染まった顔を隠すように、正和さんの胸に顔を埋めれば、それと同時に脱衣所の床に下ろされて、尚のこと恥ずかしくなった。
* * *
そして、迎えた土曜日。今日は正和さんもお休みで、デートに行く予定だが、お休みの日はゆっくり眠っていたくて、しばらく前に正和さんが起きたのは分かっていたけど、俺はベッドでゆっくりしていた。新しく買ったばかりのこのベッドはとても寝心地が良くて、目を覚ました後、再び眠りに落ちるこの瞬間が至福だ。
「純~、そろそろ起きて~」
「んー……もう少しだけ……」
「……指輪買いに行かなくていいの?」
その言葉にパチリと目が覚めると、正和さんはクスクス笑って額にキスしてきた。
「ご飯できてるよ。食べたら出かけよう」
「……うん」
大好物のフレンチトーストを食べた後は、いつもより少し大人びた服を着て、髪の毛をセットした。正和さんが着ているようなモノトーンの服は似合わない気がしたけれど、着てみると案外カッコ良く見えて、テンションが上がる。服装に合わせて前髪も少し上げてみたら、いつもより大人びて見えて、正和さんに少し近づけた気がした。
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