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第409話

「いつもと雰囲気違うね」 「へ、へん?」 「かっこいいよ」  不安に思いながらおずおずと尋ねれば、正和さんはにっこり笑って褒めてくた。 「……ちょっとだけ、正和さんの真似してみた」  少し照れくさくて俯きながらそう言えば、顎をクイッと上げられて顔がかあーっと熱くなる。そのまま彼の腕の中に抱き寄せられて、ぎゅーっと抱き締められれば、身動きがとれなくなって少し息苦しかった。 「……やっぱり可愛い」  しばらくそうしてされるがまま抱き締められていたけれど、次第に胸の圧迫感に耐えられなくなってくる。  正和さんの方が体格も力も上なのだから、もう少し加減してほしい、なんて思いながら彼の胸を軽く押せば、体が離れていって頭をクシャクシャと撫でられた。 「あ! せっかくセットしたのに!」  頑張って上げた前髪は一瞬にして崩れ去り、いつも通りの地味な髪型に戻ってしまって、思わず彼を睨みつける。これからデートするから、少しでも大人の正和さんに近づきたくて色々試して、凄く悩んで整えたのに。 「ごめん、ごめん。でも俺はこっちの方が好きだよ」 「――――」 「……怒った?」  そう聞いてくる正和さんが凄く申し訳なさそうな顔をしていて、目を合わせづらいから、少しだけ視線を逸らした。 「……正和さんがいいなら、別にいい」 「ふふ、さっきのも凄い似合ってたけど、こっちの方が年相応で可愛い」 「正和さんと釣り合うように大人っぽくしたかったのに」 「どうせすぐに大人になるんだから、今はこのままでいいよ」 「……正和さん、子供が好きだもんね」  クスクス笑う正和さんにムッとして少し嫌味っぽく言えば、彼もまた少しムッとした声で言う。 「別に子供は好きじゃないよ」 「えー、高校生好きじゃん。変なことしてくるし」

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