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第414話

「じゅん~、お願い」  繋いだ手をぎゅっと握られて、お願いしてくるけれど、嫌なものは嫌なのだ。  二人きりの時とか、ネタとしてやるならまだ良いけど、写真を撮るということは、きっとカメラマンにもその姿を見られることになる。結婚式という大事な日になんで女装なんかしなければならないんだろう、と考えて唇をぎゅっと噛んだ。 「やっぱ、正和さんは俺なんかより女の人の方が――」 「なんでそういうこと言うの」 「だって、わざわざ女装させて結婚式の写真撮るとかさ……! なんで、なんで……俺男なのに……俺は大事な日だと思ってたのに……!」 「俺は純が良いって言ってるでしょ。それに女装って、男の子しかできないんだよ」 「は……?」 「女性が女装するなんて言わないでしょ? 男の子にさせるから意味があるんじゃない」 「……変態」 「ふふ、俺は可愛い純をもっと見たいし、今の可愛い純を可愛い姿で残しておきたい」  そう言いながら正和さんはポケットから小さな紙を取り出すと、それを俺の手に握らせて、そのまま指にキスを落とした。駐車場の近くで人通りが少ないとはいえ、周りに人もいるので焦って周囲を見渡すが、彼はそんなこと気にする素振りも見せず、俺の手を両手でぎゅっと握った。 「それに俺にとっても凄く大事な日だよ。だから、綺麗に着飾った純が見たい。……お願い」  手を開いて握らされた紙を見ると、そこには「何でもお願いを叶える券」と俺の字で書かれていた。 「~~っ」  そう、これは正和さんの誕生日に俺がプレゼントした券だ。最初からこれをお願いするつもりで、わざわざ家から持ってきたんだろうか。そうまでして、俺にウェディングドレスを着せたいのかと思ったら、少し可笑しかった。 「だめ?」

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