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第415話

「……正和さんは本当に見たいの? 俺、男だよ?」 「見たいよ、凄く。だからここまでお願いしてるんでしょ」  真面目な顔でそんな風に言われてしまったら、本気でそれを着て欲しいというのなら……断れない。 「……タキシード、本当に着せてくれるんだよね?」 「うん。式の時は同じの着よう」 「――――わかった」  手に握っていた紙をくしゃくしゃに丸めて自分のポケットにしまうと、正和さんは嬉しそうに破顔した。 「ありがとう。凄く嬉しいよ」 「……似合わなくても知らないからね」 「純は何着ても似合うよ」  楽しそうに話しながら、再び手を繋いで歩き出す。車を停めた所を通り過ぎてしまったから、きっとこのままドレスを選びに行くんだろう。  こんなことなら脇毛を剃ってくれば良かった……なんて思ったけれど、正和さんが突然言い出すからいけないんだ。悲惨な姿になっても俺は知らない。 「あ、もしかして髪切らせてくれなかったのもこれのため?」 「だって純の髪短すぎたから」 「……正和さん長いもんね」 「長いって言うほど長くないでしょ。普通だよ」  クスクス笑ってそう言った正和さんは、建物のガラスドアに映った自分の髪型を少し気にしていた。 「式って旅行の時するんだっけ?」 「そうだよ。景色のいいとこで写真撮って、次の日にする予定」 「友達も呼ぶ?」 「んー、式は二人だけで挙げて、純が卒業したら披露宴しようかなって思ってるけど、純の好きにしていいよ。ただ、あと一ヶ月しかないから式には呼べないかなぁ」 「そっか」 「ごめんね、呼びたかった? 純と二人で挙げたいなあって思って勝手に決めちゃった」 「ううん、それでいい。俺も正和さんと二人でしたい」  そんな話をしていたら、ウェディングドレスが飾られた店が見えてきて、そこに行くんだろうと察しがつく。ガラス張りの店内は、白を基調とした可愛い作りで、女の子が好きそうな感じだ。  男二人だとちょっと入りづらい。

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