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第418話

「……白いオムライス食べたい」 「白いオムライス?」 「うん。……ここ」  レストランの口コミサイトをスマホで見せれば、正和さんは難しい顔をして画面を指差した。 「一日五皿限定だって」 「あ……」  今の時刻は十三時二十分。予約もしていないし、きっともう売り切れてしまったに違いない。スマホを持ったまま、しゅん……と肩を落とせば、正和さんはクスクス笑って俺の頭を撫でてくる。 「そんな落ち込まないで。来週行こう」  来週……ということは、また正和さんとデートするということで……。パァァっと目を輝かせて頷けば、またしても正和さんにクスクス笑われてしまった。  最近は毎週デートに誘ってもらえて、なんだかとても幸せだ。 「近くにフランス料理の店があるんだけど行く? ケーキが凄く美味しいんだ」 「……料理は?」 「以前ケーキもらっただけだから、他の料理は食べたことないんだよね」 「そっか」 「純、ケーキ好きでしょ?」 「うん。行ってみたい」  正和さんは歩き出すと同時に、さり気なく俺の手を取って指を絡ませてくる。その握り方は、いわゆる恋人繋ぎというやつで、少し恥ずかしかったけれど、肌がより密着して温かかった。 「食べたら、タキシード選びに行こっか。お店少し離れてるからまたドライブだね」 「タキシードなら、さっきの店にもあったよ?」 「あそこよりもカッコイイのがたくさんあるよ」 「え……カッコイイの?」 「うん。着たいでしょ?」 「着たい!」  ご機嫌で彼の手をぎゅっと握り返すと、正和さんも楽しそうに笑みを零した。 「――正和さん、好き」 「え?」 「ぁっ……いや、違っ……そうじゃなくて、つい……!」  思わず出てしまった言葉に恥ずかしくなって、顔を真っ赤にして訂正すれば、正和さんはニヤニヤと口角を上げる。 「つい? じゃあ俺のこと好きじゃないの?」 「すき、だけど……っ」 「だけど?」

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