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第11話

 ずっとお湯に浸かっていると、体がポカポカしてきて真理の頬も赤くなり始めた。しわしわになった手が気持ち悪くて、真理が指を擦ったら、零夜は真理を抱き上げて湯船を出る。  ぬるぬるした泡をシャワーで流した後、真理の体をタオルで拭いて、零夜は再び真理を抱きかかえた。真理は歩く振動に身を委ねていたら、あっという間に移動してベッドに下ろされる。 「大人しく待っててね」  部屋を出ていった零夜を見送って、真理は下ろされたベッドの上で特にすることもなく、そわそわと辺りを見回した。そうしているうちに、少し離れた所にある台の上に目が留まる。 (なんだろう)  ベッドから降りて、気になったものが飾ってある棚の前まで行くと、棚は真理の手が届く低い位置にあり、簡単に見ることができた。 「すごい……ほんもの」  前にマスターから聞いたことがあるけれど、本物を見るのは初めてだった。そこには、零夜ともう一人の男の人が笑顔で一緒に写っていて、真理はまじまじと観察した。  しばらくして零夜が戻ってくる足音がしたので、真理は慌ててベッドへ戻る。何事もなかったかのように普通にベッドの上に座っていると、零夜は水の入ったコップを真理に渡した。真理はそれを受け取って、ごくごくと一気に飲み干すと、零夜も隣に腰かける。 「真理、何してたの?」  そう言った零夜の声音はとても優しいはずなのに、何故か逆らうことができない威圧感があった。 「……さしん、を」 「さしん?」  零夜に聞き返されて、真理はこくりと頷く。 「気になって……それで、見てました。ごめんなさい」  真理が口ごもりながら謝ると、優しい手が真理の髪を梳く。額に唇が触れると、そこが熱をもったようにじんわりと熱くなった。 「もしかして写真のこと?」 「しゃしん……?」  そう言って首を傾げれば、零夜は棚の前まで行って、真理が先ほどまで見ていたものを持ってくる。 「これか?」  真理が頷くと零夜はクスっと笑みを浮かべた。 「大人しく待ってろって言ったのに」  零夜は写真をベッドの横にあるテーブルに置くと、真理からコップを取り上げる。真理は、そのまま押し倒されて、怒らせてしまったんだと不安になって、慌てて口を開いた。 「ごめんなさ――んっ」  けれど、両手は零夜の手で一纏めにされてしまい、目をぎゅっと瞑ると、顔中にキスの雨が降ってきた。唇には深い口付けをされて、頭がとろけそうに熱くなる。

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