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第12話
口の中をなぞられて、優しく舌を吸われれば、胸がトクトクと速く脈打って、息が苦しくなった。
「ぁ……ん、ん……」
火照ってクラクラする頭で、ぼんやりと零夜を見ていたら、唇がゆっくりと離れていく。そのまましばらく見つめ合ったあと、零夜はそっと手を離して、真理に布団をかけた。
「寝るか」
零夜は真理の額にちゅっとキスを落として、優しく抱きしめる。今までマスターとも一緒に寝たことがなかった真理は、会ったばかりの人と一緒に寝るなんて、とても不思議な感じだった。
「おやすみ、真理」
そう言って微笑んだ零夜は目を閉じてしまう。疲れていたのか、すぐに寝息が聞こえてきて、真理は寝顔を見ながら今日の出来事を思い返した。
(今日からほんとにここで暮らすんだ……)
そう思ったら胸がトクンと高鳴って、零夜の腕の中で小さく身動ぎして胸を押さえる。なんだか温かなものが流れてくるような不思議な感じがした。それはとても久しぶりに感じる安心感のようにも思える。
薄れていく意識の中、これからの生活に期待で胸を膨らませて、真理は目蓋をゆっくり閉じた。
* * *
『ひっく、ごめ、なさい……っく……めんなさい』
暗くて狭い部屋で、一人静かに泣いていた。鞭で叩かれた所が蚯蚓腫れのようになっていて、体中にそんな痕がある。
これは、勝手に『ソト』の世界に出ようとしてされた罰。
マスターがいなかったら生きていけないから、逃げようとかそういうのは全くなくて。ただちょっと覗いてみたかっただけ。『ソト』がどうなっているのか、気になって気になって、つい言い付けを破ってしまったのだ。
この部屋に来てからしばらく経つけれど、涙がボロボロ零れて止まらない。マスターが戻ってきてくれる気配も全くなかった。
こんな日は大抵戻って来ないし、ひょっとすると翌日だって来ないかもしれない。
『ますたぁ……ぅ、っく』
暗くて怖い。鞭で叩かれた背中が焼けるように熱い。マスターになら何をされたても良いけれど、一人ぼっちにされるのだけは嫌だった。
* * *
「――――り……まり。おーい」
耳元で大きな声が聞こえてきて、真理は目を覚ます。
「うなされてたけど大丈夫か?」
そう言って心配そうに真理の顔を覗き込む新しいマスター。指で目元を優しく拭ってくれて、泣いていたことに気づく。
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