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第14話
「いい匂い」
目の前に並べられたものからはとても美味しそうな匂いがして、真理は微笑んだ。
「食べていいよ。……いただきまーす」
そう言って零夜は食べ始めるが、真理はどうしていいかわからずに戸惑った。
いい匂いはするけれど、どう見ても食べ物に見えないそれは四角く薄茶色だし、もう一つの皿には真ん丸の黄色いものが乗っていて、そのまわりを囲むように白いものが平たく広がっている。
零夜が飲んでいるものは液体が黒く、とても不気味だった。真理の近くにある同じようなコップには、オレンジ色の液体が注がれている。
戸惑っている様子の真理に、零夜は不思議そうに声をかける。
「どうした?」
「だって……これ食べれるの?」
すごく失礼な質問をしてくる真理に、零夜は少なからず傷ついた。
しかし、本当に困ってる様子から、これまでと食べてきた物が全然違うんだろうという事に気づく。
「好き嫌いは別として真理が食べれない物は俺だって食べれないよ」
零夜は席を立つと真理の隣の席に座って、一つ一つ指差して説明する。
「これはパンで、これはオレンジジュース。で、これは目玉焼き」
「目玉焼き!?」
(めだま? めだま? めだまー!?)
「そう。目みたいだけど、ほんとの目じゃないから安心して」
零夜は慌てる真理を宥めるように言って、箸で目玉焼きを切り分けると、真理の口元に運んだ。不意を突かれた真理はそのまま食べてしまって、サーッと青ざめる。
「――――」
「どう?」
「……おいしい」
想像してたより美味しかった。いや、想像なんて元々つかなかったが、不味そうなイメージだったそれは意外と美味しかったのだ。
「良かった。これは甘いよ」
零夜がそう言って、オレンジジュースを勧めるので、真理はコップを両手で持つ。恐る恐るジュースを口に含んで、顔を上げると真理は顔をパーッと輝かせた。
口内に甘さが広がって、ほんのりとオレンジ特有の酸味が残る。初めて飲んだそれは、とても美味しかった。
「これ、とってもおいしい」
「そうか。じゃあ、また買いに行こうな」
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