14 / 16

第14話

「いい匂い」  目の前に並べられたものからはとても美味しそうな匂いがして、真理は微笑んだ。 「食べていいよ。……いただきまーす」  そう言って零夜は食べ始めるが、真理はどうしていいかわからずに戸惑った。  いい匂いはするけれど、どう見ても食べ物に見えないそれは四角く薄茶色だし、もう一つの皿には真ん丸の黄色いものが乗っていて、そのまわりを囲むように白いものが平たく広がっている。  零夜が飲んでいるものは液体が黒く、とても不気味だった。真理の近くにある同じようなコップには、オレンジ色の液体が注がれている。  戸惑っている様子の真理に、零夜は不思議そうに声をかける。 「どうした?」 「だって……これ食べれるの?」  すごく失礼な質問をしてくる真理に、零夜は少なからず傷ついた。  しかし、本当に困ってる様子から、これまでと食べてきた物が全然違うんだろうという事に気づく。 「好き嫌いは別として真理が食べれない物は俺だって食べれないよ」  零夜は席を立つと真理の隣の席に座って、一つ一つ指差して説明する。 「これはパンで、これはオレンジジュース。で、これは目玉焼き」 「目玉焼き!?」 (めだま? めだま? めだまー!?) 「そう。目みたいだけど、ほんとの目じゃないから安心して」  零夜は慌てる真理を宥めるように言って、箸で目玉焼きを切り分けると、真理の口元に運んだ。不意を突かれた真理はそのまま食べてしまって、サーッと青ざめる。 「――――」 「どう?」 「……おいしい」  想像してたより美味しかった。いや、想像なんて元々つかなかったが、不味そうなイメージだったそれは意外と美味しかったのだ。 「良かった。これは甘いよ」  零夜がそう言って、オレンジジュースを勧めるので、真理はコップを両手で持つ。恐る恐るジュースを口に含んで、顔を上げると真理は顔をパーッと輝かせた。  口内に甘さが広がって、ほんのりとオレンジ特有の酸味が残る。初めて飲んだそれは、とても美味しかった。 「これ、とってもおいしい」 「そうか。じゃあ、また買いに行こうな」

ともだちにシェアしよう!