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第15話
そう言った零夜はトーストをちぎって、甲斐甲斐しく真理の口へ運び、真理は最後まで零夜に食べさせてもらった。
あれだけ怖がっていたのに全て食べ終えた真理は、脚をパタパタと揺らしてご満悦だ。テーブルを片付ける零夜の動きをキョロキョロ観察して、落ち着いた頃に控え目に話しかける。
「たおるください」
「――――どうぞ」
小さい子供のような口調で言った真理。零夜は何に使うのか不思議だといった感じで、洗濯したばかりの手拭き用タオルを渡した。しかし、真理はお礼を言って受け取ると、なんの躊躇いもなくそれを自分の口の中に入れてしまう。
「真理!?」
「ふぁい」
食べてしまうのではないかと心配した零夜だったが、どうやら違うらしい。突然名を呼ばれてビクッとした真理はタオルを口に入れたまま返事をして、ごしごし、と歯をみがく。一生懸命に歯磨きする真理の真剣な表情が可愛らしくて、零夜は安堵すると共にクスッと笑みを零した。
「……何でもない。大きい声出してごめんな」
真理は丁寧に歯を磨き終えると、零夜が食器を洗い終えるのを待ってタオルを返した。それを受け取った零夜は、真理の目の高さまで屈んで頭を優しく撫でる。
「次から歯磨きはブラシでやろうな」
「ぶらし?」
「うん、今から俺がやるから見てて」
零夜は真理に教えるように歯ブラシを使って歯を磨く。その様子をじーっと見ていた真理はすぐに理解したようで、楽しそうに目を輝かせた。
「ぼくもやる!」
零夜は新しい歯ブラシを開封して真理に渡すと、持ち方を教える。
「これ、真理のな」
「ぼくの?」
「ああ、そうだよ」
真理は楽しそうに歯ブラシを観察したあと、先ほど零夜に教えてもらったように歯を磨く。歯磨き粉が少し辛かったけど、初めてでも上手に磨けて零夜に褒められた。
「おいで」
タオルと歯ブラシを片付けた零夜に呼ばれて、後ろをついて行く。リビングを出て廊下を進むと、二つ目のドアの前で零夜が立ち止まったので、真理は顔を上げた。
「ひらがなは読めるんだっけ?」
扉を開けながら聞いてくる零夜の問いに、真理はこくりと頷いて口を開く。
「すうじ、も……」
そう言って、部屋に入ると中には本がたくさん置いてあった。
隅の方には箱が置いてあり、中にはゲーム機などが入っている。それが真理のための玩具だと知るのはもう少し後のこと。
「なら、真理には音読してもらおうかな」
零夜は本がたくさん詰まった棚から何かを探し、その内の一冊を抜き取ると真理に手渡した。
しかし、真理は零夜の言った言葉の意味がわからず、首を傾げて聞き返す。
「おんどく?」
「そう。声に出して読むの」
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