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第60話

「じゃ、イイトコ見せるから、ストライク取れたら格好いいって言ってね」 パチンと様になるウインクひとつ決めて、ボールの穴に指を差し込む。 どれだけ自信があるのか、それともただの自信家なのか、堂上先輩は怜に向けても軽く手を振ると、堂々たる佇まいで投球位置へと向かった。 やっぱり、男しかいない男子校に三年間も通ってると、所謂BLで言うとこの 受けっぽい男子への扱いがそれ相応のものになっちゃうんだろうか。 先輩、一応俺たちオトコノコですよ。 そう云うのは女の子相手にやればいいんじゃないの? それとも、先輩もおなかまなのかな? 俺達がちょっと引き気味に見守る中、堂上先輩は見惚れるほどの流麗なフォームで球を放った。 美しいカーブを描き、中央よりも左に当たった球が、一瞬にしてピンを弾き飛ばす。 振り返り、フッと口元を緩めたその表情に、思わず息を呑んだ。 「「「かっ…こいい……」」」 溜め息と共に吐き出された呟きは、図らずも月都と怜と被ってた。 「ちょっ…、3人共!? 俺もストライク出したよね!?キレーなフォームで!なんで俺にはカッコイイが無かったの!?」 シノがまたなんか一人で騒いでやがる。 「え…、だって、シノと先輩じゃシルエットが…手足の長さが違うし」 パッと見185cmはありそうな堂上先輩と、この前175cm超えたって嬉しそうにLimeしてきたシノとじゃあ…。 「風格が…ちょっと…」 「ライちゃんのは見慣れてるもん」 月都は控えめに、怜はズバッと、それぞれのやり方でシノに追撃する。 多分、月都発言の段階で、シノにはオーバーキル。 「大丈夫。君も格好良かったよ。その…篠田君?」 「篠巻です!本人に慰められても嬉しくないよっ!!」 せっかく王様自ら褒めてくれたってのに… 素直に受け入れられないシノは、立ち上がってまで不満をぶちまける。 まったく以てうるさい。しょーがない奴だ。いつまでも小学生の男子みたいで。 俺達だけならまだいいけど、ただでさえ目立つ面々が集まってんだから。これ以上騒いだら、益々人目を引いちゃう。 あきくんと先輩たちに迷惑がかかっちゃうじゃん。 はぁ…。仕方ない。 久しぶりに、アレを発動しますか。 「シノ、お座り。あんま煩いとこっから追い出すよ」 「っ!! ワンッ」 ベンチを指差して命令すると、シノは途端その場に座っておとなしくなった。 よしよし、俺の飼い主力は衰えてなかったようだな。 つか俺、ベンチに座れって言ったんだけど。 (そこ)に座られると、俺がいっつもそうさせてるみたいじゃん! 床に正座しろなんて、中学の頃だって時々しか言ってなかったよ!!

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