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第62話

お泊りセットの入ったドデカいバッグを持って自室を出る。 「父さん、母さん、行ってくるねー」 リビングに顔を出すと、母さんから「これ持ってって」と紙袋を渡された。 あきくんへの卒業祝いの品らしい。 「これから先も十碧がお世話になるんだもんね。こういう事はちゃんとしておかなきゃ」 「娘を嫁に出す父親ってのは、こんな気持ちになるのかな…スン」 「っ!!」 なん…て事だ! 二人とも、一体ドコまで気付いちゃってんだ!? つか、俺 男で、あっちも男なんだけど、親的にはそれ構わないの!? 「……えと、俺、嫁に行っちゃってもいいの…かな?」 「なっ……!? まだダメだよ、十碧っ!君はまだ高校生なんだからね!?」 「じゃあお父さん、七瀬君にお婿さんに来てもらう? 鞍馬の時はムリって思ってたけど、七瀬君なら喜んで迎え入れちゃう」 「小夜子さん!? 」 「お母さんとしては、七瀬くんが婿入りでも十碧が嫁に行くんでも、どっちも応援するけどね~」 「十碧っ!十碧はまだお嫁さんになんて行かないよね!? 十碧はいつまでもうちの子なんだからね!?」 「あ、うん……。取り敢えず行ってきます……」 ……なんか、色々覚られてたみたいだ。 うん、なんか、俺………うちの子でよかった。 途中、花屋さんに寄って小遣いの中で買えるブーケを見繕った。 真っ白なトルコキキョウに、淡い黄色と薄いブルー、やさしいピンクの小花を添えて。 清麗で温かいあきくんのイメージで花を選んだ。 我ながらなかなか。綺麗ですっごくいい感じに出来た! 花屋のお姉さんがボリューミーに可愛くリボンを結んでくれたから嬉しくて、思わず花束を抱き締めてお礼を言うと、目を潤ませながら「尊い…!」って手を合わせて拝まれた。 「卒業する先輩に送る花束です」って説明した時、そこの男子校ですとも付け加えたから、そこが彼女の心に刺さったんだろう。 きっとお姉さんは、沙綾ちゃんと同じ属性の人なんだと思う。 始終、接客マニュアル以上にニコニコで、「これはサービスですっ」って、ピンクのガーベラを一輪 髪に挿してくれた。 お姉さん的には、俺は受け属性らしい。 攻め側に花を一輪なら、胸元に挿すとかなんとかすると思うんだ。色もこんな可愛い色じゃなくてさ。 そう言えば……と、中学生の頃 沙綾ちゃんに伸びすぎた前髪を花の髪留めで留められたことを思い出して、なんだか可笑しくなった。 「ありがとうございました」 会計を済ませて、「こちらこそありがとうございました」って頭を下げると、 「いえいえっ、ほんっっとーに、有意義なひとときでした!」 思わずお姉さんに見入って噴き出すと、彼女は照れたようにエヘへと言って。二人顔を見合わせたまま、暫く笑ってた。 俺、ちょっと浮かれてるかも知んない。 やっと あきくんに「好き」って伝えられるから。

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