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第63話
時刻は11時半。
あきくんが、このぐらいに卒業式が終わるって言ってた時間。
一足早くあきくんの家に着いた俺は、勝手に門を開けて敷地内に入り込み、玄関前に陣取った。
多分、式が終わってまず、あきくんと別れの時を共に過ごしたい卒業生たちや、会場の外で待ち構えてる後輩たちに捕まると思うんだ。あきくん人気者だし。
そんで暫く話して。
学校からここまで徒歩で約15分。
12時は過ぎると思うんだよね、家に着くの。実際のところ。
でも、早く俺の答えを聞きたくて慌てて帰ってくるかもしれないし、先に陽成さんが帰ってきたら中で待たしてもらえるし。
それにさ、正直言うと、朝から…ううん、もう昨日別れてからずっと、ソワソワしちゃって落ち着かなかったんだよね、俺。
早く逢って、早く好きって言いたい。
気持ちばっかり膨らんじゃって、でもまだ行動に移せないもんだから!
家に居ても、ひとり部屋で「わぁぁっ」って言いながら転がっちゃう始末。そんな事ばっかして悶々してるよりはあきくんになるべく近いトコで待ってた方が建設的…ってか、落ち着くよね!ってことで、決めてた時間よりも早く家を飛び出した。
まあ、ここにいた所で、待ちくたびれて、ただ玄関前で座りこんじゃってるワケなのですが……
「十碧……? …えっ、十碧っ!?」
バタバタバタッて足音がして、肩をグイッと掴み起こされた。
「十碧?こんな所で眠ってたら風邪引くよ!?」
らしからぬバタバタ と、若干乱暴な起こし方。だけど正真正銘 想い人の香りと声に、俺はゆっくりと重たいまぶたを開いた。
「立てる?」
ほらね。やっぱり俺の王子様だった。
立てなければ抱き上げていくけど。そう気遣わしげな表情で言うあきくんに、首を横に振ってみせる。
今は寝起きで危ういけど、もうちょっとしたら自分でしっかりと歩けるし。
それに俺、言いたいこと、まだ伝えられてない。
移動よりも、こっちが先。
「十碧、」
「あきくん」
あきくんの言葉を遮って、もうちょっと、ちゃんと身を起こす。
「あのね。ご卒業、おめでとうございます。
好きです」
首に腕を巻き付けて、チュッてキスをした。
「俺、ちゃーんとよく考えたから。マジで恋のやつの、好きです」
「・・・・・・・・・」
ん?…無反応!?
「あきくん…?聞いてますか?」
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