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第71話

(はる)から逐一報告受けてたのよ」 シルバーのスマホをひらひらと振って、彼女はいたずらに微笑む。 「初恋もまだだった奥手の(あき)が初めて好きになったのが男の子、なんて気にならないわけがないでしょう? 昔っからこの顔のお陰で無駄にモテてた癖に誰にも落ちないから、“難攻不落の王子様”なんて言われてたのよ、この子」 「あきくんは顔だけじゃなくて佇まいも王子様です!」 初めて好きになった……だって。あきくんにとっては俺が初恋なんだ。 なんか こそばゆいけど、嬉しい。 「いつから知ってたの?」 「秋口かしら」 「えっ、…そんな頃に僕、兄さんに十碧のこと話してないんだけど」 「ああ。俺、慶一郎とメル友だからね」 お母さんとおんなじ顔してニヤリと笑う陽成さん。 あきくんはちょっと苦々しい顔になって、「平茅め」と呟いた。 慶一郎って、平茅先輩のことか。 「恋人居る子だって言うから、初恋は失恋になっちゃうのかなって、これでも心配してたのよ」 「高校生にもなって、親に恋愛事の心配されたくないよ…」 「そうしたら先月、急接近したって言うじゃない」 あ、あきくんのぼやき、流された。 「でも、良かったって思うより先に、どうなのよ?って思ったの。恋人と別れてすぐに他の男に?って」 「っ……」 お母さんの言葉に、ちょっと息が詰まった。 やっぱり、普通はそう思うよね。 別れたからってすぐに他の人に乗り換える薄情者。どうせ次もまたおんなじことを繰り返すんだろう、って。 あきくんは、俺の事情は皆が知ってるからそんな風には思われないって言ってくれたけど、本当ならそう思われるのが当然だ。 「十碧はそんな尻軽じゃないし」 今もそうやって、俺のこと庇ってくれるから、罪悪感を覚えずにいられるけど。 「ええ。わかってる。十碧君は玲のこと、凄く大切に、真剣に考えてくれてるよって、陽が教えてくれたから。  母親の私から見てね、陽の人を見る目は確かだから。お兄ちゃんがそう言うなら、安心してうちの末っ子を任せられるって、そう思った」 目が合って、ふわりと優しく目を細められた。 陽成さんに似た目元が、あきくんに似た雰囲気を纏って。 だけどすぐに、やっぱり陽成さん寄りの表情に切り替わる。 「でも、誰がどう見ても“恋してる”顔で玲の事を見てるのに、恋愛として好きなのか分からないからちゃんと考える、なんて。あの子ちょっと天然だよね、ですって」 「や、天然じゃないです!」 「いやいや、天然でしょう」 「あらいいじゃない、天然。可愛くて」 「兄さん、母さん、十碧のこと揶揄って遊ばない」 「!」 遊ばれてたのか俺! 「えー?天然なのに?」 まだ遊ばれてる…! 「ちなみに、写真も送ってもらったけど、私好みの可愛い子で、良くやった玲!ってね。陽の彼女は歴代皆イマイチだけど、玲はきっと私と好みが似てるのね」 「イマイチって失礼」 「ええ? だって、露出度低い巨乳に、お堅そうな眼鏡を取ったら超美人? 昼間は淑女で夜は…みたいな性癖丸出しのチョイス、」 「母さん!十碧の前で変な発言しないで!」 お母さんの言葉をあきくんが慌てたように止める。 いや、俺 別にそんなの聞いて真っ赤になっちゃうほどウブなタイプでもないんだけど。 あきくんは俺のことちょっと神聖化しがちだよね。 まあ、母親と息子の会話で「性癖」って出るのスゴイな…とは思ったけど。

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