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第80話

だけどそんな態度にいちいち怯えるほど鞍馬のことが怖くない俺は、「で?」の一言で続きを促してやる。 「で、じゃねーよ」 「ぃでッ!」 わざわざ前髪持ち上げて、デコピン一発食らわされた。 「もーっ、暴力反対!」 「で、よくよく考えたんだけどな」 無視だし! 結局自分でも“で”っつってっし! 「やっぱ納得いかねぇ」 「なにが?」 「お前の言い分」 「どーれ?」 「恋なんかしてねぇ、ってヤツ」 「はぁ?」 「とにかく聞け」 「いてッ」 今度はおデコ はたかれた……。 「俺が浮気を繰り返した事には、2つの理由がある」 「はあっ!?」 なんだそれ!なんだその浮気を正当化しようとしてる話し出しは!! どんな理由があったとしても、浮気は悪だかんな!他のヤツと遊びたいなら別れてからいくらでもどーぞ!ってんだ。 「1つめは前にも話しただろ。お前の気持ちを確認する為だ」 コイツ──! 俺が怒ってんの、全然気にしちゃいねぇ! 「で、こっからが主題だ。2つめの理由は、ムラムラしたからだ」 「・・・・・・・・・は?」 「お前が俺を好きだってのを確認できる上に、性欲も満たされる。これ以上の一石二鳥があるか」 ……………、いやいやいや、何言ってんの鞍馬!? この人怖いわ!! 「すなわち、俺がお前に向けていた“好き”は恋愛感情を伴ったものだった、つーことになる」 「っ、…いやっ、なんないだろ!」 「は? テメ、ちゃんと人の話聞いてたか?」 「聞いてたけど、その結果にたどり着く道筋なんて無かったよ!?」 「話の行間を読め」 「ドコにあったよ、その行間‼」 全力でツッコんでやったのに、鞍馬はそれには答えず、俺に対して可哀想なものを見る目を向けてきた。 何それ俺が悪いの!? 腹立つんだけどその視線!! 「っから、俺は女が好きだと思ってたんだよ」 「は?鞍馬が?つか普通にそうなんじゃないの。俺に告ってきた方が間違いで」 「いや。それが最近、世の中にバイセクシャルって括りがあることを知った。バイってのは男も女もイケるらしい」 ああ、さっき俺、バイの人 二名様に会ってきたわ。括り知ってるどころか、正真正銘そうだって人と直接知り合いだわ。 って、その存在、最近知ったのかよ。 鞍馬は性的知識豊富って勝手に思ってたんだけどな。意外と俺より物知んないんだな。 「で、バイがどうしたって?」 「俺、ソレじゃねぇ?」 「は?…いや、鞍馬はノンケだろ」 「あ?なんだって? 新しい言葉出すんじゃねぇよ」 「だから、鞍馬は女だけだろ、ってコト」 「いや、男もイケた」 「だからー、それは特殊にアサトが可愛かったから、」 「ち○こ付いてたぞ、アイツ。まあちっせーガキみてぇなヤツだったけど」 「ちっせーって言ってやんなよ…」 アサトは自分が可愛いのカサに着るヤツだけど、別に女になりたい訳じゃないだろう。だから、男としてまぁサイズなんかは……、うん、言われたら気にするとは思う。 俺はサイズよりか見た目の綺麗度の方を重視しちゃうけど。 てーかさ、一人で思ってる分には良いけど、ソレ他人にバラしちゃダメなことだろう。 特に俺、アンタの元カレだから。好きな男の元カレになんか一番知られたくないだろ。ち○このサイズとか感度とかさ。 ほんっっと この男は無神経なんだから。

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