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第90話
「そもそも、その、……やり方が、正直分かってないから、いきなりは出来ないんだよ、十碧」
分かってくれる?って首を傾げたあきくんは、頗る可愛い。
そんな顔で訊かれたら、うんうんわかりますわかりますっ!ってつい、答えてあげたくなっちゃう、けど……
「やり方、……調べたりしなかったの?」
俺なんて、超ヤル気満々で、洗う、解す、前戯から本番、中出しの始末までなんでもござれで学習してきたのに!?
ひとえにあきくんと繋がりたくて、その一心で……いや、思春期的なエロい気持ちがあったか無かったかって訊かれりゃそりゃ……でもほら、ひとつになった幸せを感じたいっていう、この尊いアレ的なさ。
とにかくさ、俺の言いたいことは、
あきくんは、俺と恋人同士になったとこで、俺の体なんてどうでも良かったの?欲しくなかったの?って話だ!
「あの、さ……」
ん? って首を傾げるあきくん。やっぱり鬼可愛い。
──いやいや、そうでなくて!
「あの……、俺の体、魅力ないかな?」
勃ててる時点でそんな心配無い、って勝手に思い込んでたけど……
触られたから反射的に起っちゃった、男特有の生理現象って可能性もあるってこと、全然考えてなかった…。
顔は…顔だけは、史上最高に可愛くて色っぽいって、そう伝えてくれた、けど。
「やっぱり、おっぱい無くてち○こ有る体、実際見たらムリだったとか、そもそもソコは挿れるトコじゃなくて出すトコだから汚いとか、そう言う…」
「違うよっ!」
俺が口にした疑問はあっと言う間に否定された。
「じゃあ、なんで?……体が要らないんじゃ、俺の心だけが自分のものだったら良いって言われてる気がする。
──俺のこと、飼い殺しにしたいの?」
「っ、………」
それじゃ鞍馬の時とおんなじだ──って俺の気持ちが、言葉にせずとも伝わったのか。
あきくんは目を見開くと息を呑んで、刹那、震えた唇で、「そうじゃない!」首を必死に横に振って、俺の考えを否定した。
それでも一度芽生えた不安は簡単には消えてくれなくて、そっと目を伏せる。
元気に主張してた俺の熱は、持ち主の気持ちを表すかのよう。いつの間にかふにゃんと首を折っていた。
「十碧、不安にさせるようなことしてごめんね」
肩に手が掛かる。
「僕がそういう事を調べなかったのはね、」
あきくんのも、すっかり縮んじゃって……、もう、今日はダメかな…。
「フライングで手を出しちゃいそうで怖かったから」
「…フライングって?」
思いの外、拗ねた声音になったのは、無意識に唇が尖っていた所為か。
「付き合えても居ないのに、付き合えるかも分からないのに、十碧が可愛くて堪らなくて……万が一理性が効かなくなって、襲ってしまったらって…。
やり方を知らなければそれが枷になって留まれるけど、知ってしまえば止まれなくなりそうで……」
……………なんだそりゃ……
なんだそりゃ!?
なんだその、イイコちゃんな理由は!?
我慢できなくて襲っちゃったけど、嫌がってないから最後までやっちゃうか!じゃダメなの!?
もし嫌なら俺だってただで受け入れることなんて絶対ないし、
俺、あきくん相手ならいつでもウエルカムだったよ、たぶんずっと。
「……あっ!だったら昨日の夜 調べたら良かったじゃん!だって今日、俺が返事する約束でっ」
「昨日は、その……。十碧が堂上のこと好きになっちゃったんじゃないかって不安で、それどころじゃなくて」
「───!!」
そうだった…!
そういやこの人そんな勘違いしてメソメソしてたんだった……
あーもうっ!あーっもう!なんだよ!!
行き場を失っちゃった、綺麗にしてきた俺のお尻が衝撃的に可哀想なんですけどぉおおーーーっ!!
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