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第93話
すっとぼけてるのか、本当に知らないのか…
読めない陽成さんにジト目再来で不満をぶつけてる内。…ふと、さっきあきくんから聞いた とんでもない教えを思い出した。
恋愛においては3が大切、ってやつ。
この人、ほんっと余計な事しかしないな!
十碧さんビックリだよ!!
「時に陽成さん」
「ん?なにかな」
唐突に微笑んで話の転換を試みた俺の意図に、きっとこの人が気づかない筈がない。
なのにまぁた すっトボケて笑顔で返してくるとか…!
なんて図太い人なんだ!!
「“3”ってなんですか」
「さん?」
小首を傾げるな、そんなことしたって あきくんみたいに可愛くなんないから、この別ベクトルの美形め!
「恋愛においては3が大切、ってあきくんに教えましたよね?」
質問じゃなく、確認。
強い口調で訊ねた俺に、当然怖がるでも怯えるでもなく「あぁアレね」と、可笑しそうに笑い出す陽成さんは、きっとお母さんの性格を色濃く受け継いでいるんだろう。
俺の威圧的な笑顔。絶対に逆らえない、得体の知れない恐怖を感じて思わず従ってしまう!って、結構評判いいんだけどな。主にシノと西野に。
年上には効果無効なのかな?
「いやほら、昭和的にはドンピシャだよね。バブル以前? 玲って、今の子にしちゃ あまりに純粋だし」
だから簡単に騙されるってか!
それに昭和なんて、自分だってまだ生まれてなかっただろーがっ!!
「そっすね。ドンピシャって言葉も、昭和的にはドンピシャかもですね。でも今は、平成も終わりに近付いている21世紀なので」
「わぁ〜、十碧君って実は、21世紀少年?世紀末の覇者?21面相?」
「それを言うなら20世紀…、ってそんなのはどうでもいいでしょ! 問題は、あきくんから『エッチなことするのは付き合って3ヶ月経ってから』って言われたことです!」
「うわ…、うちの子かわいい」
「可愛いじゃなしに!3ヶ月もなんも無しとか、俺的には死活問題です!」
「弟が襲われる…!」
「ちがう!俺が襲われる方!!」
「はぁ…よかった。玲が上ね」
安堵の溜め息か、それは?
それに、上なら良かった、ってそりゃなんだ!
うちの従姉なら、なんで攻めなの!? 身内が受けの方が色々楽しいに決まってるじゃない!って騒いでるトコだぞ。
「冗談は兎も角、…じゃあ、一緒に風呂入って、2人の間には何も無かった、って訳ね」
冗談だったのか……
いや、冗談だろうけど!
疲れるわ…、まったく。この人と話してると。
「あ、いえ、何も…ってほど無かった訳でもないです」
「へぇ…。キスはした?」
「しました」
「ディープなやつ?」
「ディープなやつも」
「抜き合いとかは?」
「中途半端に」
「聞いたら全部教えてくれちゃうんだ。十碧君、素直だねぇ」
「ええ。素直で良い子ですから」
「訂正。素直でエロい子ね」
「余計なお世話だわ!」
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