99 / 120

第99話

独占欲丸出しなセリフに、俺の胸はきゅんきゅんドキドキ。鼓動が激しすぎて苦しいくらい。 いやぁ、愛されてるなぁ…俺。 この、惜しみなく『好き』って伝えてくれる感じ。 愛情に包まれてるって実感。 恋人ってやっぱりこうじゃなきゃだよね! ねえ、あきくん…。 俺からの『大好き』も、ちゃんと伝わってますか? 触れ合った肌の感触。 ほっぺをスリ…て擦り付ける。 「ん…。十碧、くすぐったい」 耳元に柔らかな笑い声。 ベンベン ベーンベーンベーン ベッベッベーンべベッベベーン♪ ピクリと顔を上げる。 視線の交わったあきくんは、気にしなくていいよ、とばかりに目を細めるけど…… ベン ベベンべベンベンベンベンべべべべべベーン♪ いや気にしないようにしたって気になるわコレ! なんで、かの有名なパッションな大陸のヴァイオリン曲を三味線で演奏しちゃってんの!? 誰、そんなことすんの!? しかもそれを着メロに使う意味!! 「兄さん、出て」 はぁ…、と呆れたように溜め息を吐いたあきくんに促されて、陽成さんがスマホをタップした。 「慶一郎? どうした?」 電話の相手は、平茅先輩らしい。 「うん。………。あ、そっか。卒業おめでとう。……。え?今から?」 陽成さんの目が泳ぎながらあきくんを伺い見る。 「出掛けるならどうぞ」 「あ、……どうも…です…」 会釈して、気まずそうに視線を逸らす。 あきくんに対して相当、怯えてるらしい。 相手はこんなに優しくて綺麗な王子様なのにな。 「わかった。今から行くよ。………。ん、近くまで行ったら電話入れるから。……。おう、じゃあ後で」 スマホを切ると、また落ち着かない視線をあきくんに戻す陽成さん。 お兄ちゃんの風格は今やゼロどころかマイナスだ。 「えぇと…、慶一郎に誘われまして、……って言うか、助けを求められたので…行って参ります」 「助け?」 「うーん…。慶一郎の部活と生徒会とで一緒に打ち上げやってたらしいんだけど、何故かそこに近所の女子校の卒業生まで加わっちゃったみたいで、抜け出せなくて困ってるから助け出してくれって」 ああ…。なんだか想像に容易いわ…。 平茅先輩と、生徒会ってことは、堂上先輩だろ? あの、長身のイイオトコが2人揃って、皆で打ち上げパーティー、なんてやってたらさ。 卒業式でテンション上がっちゃってる女子ハイエナ(ブチハイエナの発音で)達の、格好の餌食じゃん。 100%声掛かるわ。この機会に…、って連絡先聞かれまくりだわ。 そんなトコに、あきくんが行かなくて良かった。 ちゃんと帰ってきてくれて、今改めて、ホッとした! 「だったら早く行ってあげて」 「はいっ!ありがとうございまっす!!」 「今夜は泊まってくるんだよね?」 「えっ…?」 「帰らないんだよね?」 久々に、陽成さんに向けてにっこりと微笑んだあきくん。 気のせいかな。 そのお顔に、『どの面下げて帰ってくるつもり?』って書いてあるような…… いや、やっぱ今の無し!あきくんがそんな黒い事思う筈がないし! 「……慶一郎の家に泊めてもらいます」 「うん。気をつけて行ってらっしゃい」

ともだちにシェアしよう!