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第101話

髪を乾かしあったあと、部屋に行こうと誘われて、あきくんの自室へ移動した。 どうぞって促されて、ベッドに腰を下ろす。 あきくんの部屋は、あきくんの匂いでいっぱいのステキ空間。 その中でもこのベッドは、特に薫り高いユートピアだ! さっそく、枕を抱き締めて香りを嗅ごうと鼻を近づけたら、すかさず取り上げられて遠くに放り投げられた。 ………ちっ。 「十碧、こ〜ら。舌打ちしない」 「はっ!」 心の中の舌打ちは、どうやら表に出ていたらしい。 ごめんなさい、と謝れば、すぐに笑顔になって頭を撫でてくれた。 素直。これ大事。とっても。 「そんなことより十碧」 そんなことって…… 俺にとっては至宝の枕。そんな風に片付けないで貰いたい! 「首、手当してもいい?」 「首? 別にいいけど…」 そんな酷い傷でもないだろうから、放って置いてもそのうち勝手に治る。 だから、別にやらなくてもいいけど…、って意味で答えたんだけど…。 「化膿止め塗って、絆創膏貼るから、少しだけ大人しくしててね」 ドラッグストアのビニール袋からガサリと取り出されたそれらを見てしまえば、手当なんて要らないなんて言えなくなってしまう。 俺は従順に、傷付いた首を差し出した。 「もしかしてさっき、ひとりでそれ買いに行ってくれたの?」 「うん。…あ、そうか。行き先伝えずに出掛けたから、不安にさせちゃった?」 「ううん。大丈夫」 ほんとは、陽成さんに「仕返しで元カノ(カレ?)に会いに行ったんだろう」なんて言われて、ちょっと気にしたりもしたけど…… 武士の情けだ。 あきくんには話さないでおいてやろう。 機嫌直ってるかなぁ…って気にしいで帰ってきて、新たな理由で怒られるのとか結構辛いだろうし。 「それとね、さっき堂上に電話して…」 首にドデカイ絆創膏をぺたり。 よくこんなおっきいの売ってたな、と驚くサイズの真四角絆創膏。 もしかしたらこれを探して、近所のドラッグストアをハシゴしてくれたのかもしれない。 「ん…? 堂上先輩…?」 なんでここで突然 堂上先輩の話に? ……はっ!もしや堂上先輩、大手ドラッグストア チェーン店を牛耳る会長の孫、跡取りの御曹司だとか!? 「十碧…? あの、堂上が御曹司って話じゃなくてね?」 はっ!また声に出してた!? 「色々…その、堂上に聞いて、勉強したので…、」 「あっ!堂上先輩繋がりで、陽成さん、平茅先輩から呼び出されたの?」 「うん。そう…なんだけど…」 「俺とふたりっきりになりたかったから、呼び出すように言ってくれたの?」 「……うん」 っ───くうぅっ! 恋人と二人きりになりたくて友達使って実の兄を追い出すとか! チョイ悪あきくんも素敵じゃないスか!! 「あの…、う〜ん……」 俺から発されるラブラブビームに照れているのか、……いや、照れてるんじゃなさそうだな、コレ。 なにか考えてる顔して、目を泳がせてるあきくん。 う〜ん…?? ………あっ!泳ぐと言えば、夏休み! ご一緒にプールや海はどうですか!? え?話の脈絡? そんなんより、欲求の報告の方が重要でしょ! だって見たいもん!あきくんの水着姿!! 同級生は夏場 見放題だったんだよなぁ……。 堂上先輩も平茅先輩も、他の先輩たちも体育の先生も、俺より先に……、みんなズルいっ!!

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