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第102話

「うぅ〜ん……。十碧には見せた方が早いかな…」 ここからだったら何処の海が良いかな? 近いのは湘南鎌倉辺りだけど、遠出して伊豆なんかもいいよね! あっちは海もキレイだし。 白い砂浜、輝く水面─── それすら凌駕しちゃって輝きまくる王子様……、眩しいっ! 逆ナン仕掛けてくる(ハイエナ)共には目もくれずに、「この子とデート中なので」ってバッサリキッパリ断ってくれそう。 「せっかく十碧と2人きりなのに…。一秒だって邪魔されたくないよね」なんて溢してみたり。 そんでそんでっ、海でバシャバシャ遊んだ後は、着替えて高台に上がって。 落ちる夕陽を眺めながら、二人の影が一つに重なって……、ってやつ! 妄想だけでご飯6杯はいけるわ! どうもご馳走様です!! さて、そうと決まれば宿を探さな……あっ、ダメだ!お金が無い!! なら、バイトしてお金を貯め……、ダメだ!あきくんと逢える時間が減っちゃう!! かくなる上は、母さんのお手伝いに、父さんのお背中流し係、更には沙綾ちゃんに恋愛事情報告係で、なんとか小銭を稼いでいくしか……!! 「十碧、考え事してるトコごめんね。これを見て下さい」 「ん?……はい」 顔を上げて、あきくんの手元を見る。 ガサリと絆創膏の入ってたビニール袋が開かれて、中から丸い筒状のボトルと、薄い長方体の箱が現れた。 爽やかブルーの箱には、『0.02』『極薄』の文字。 ……………ん?? 改めて、ボトルの英語も読んでみる。 『Love Lotion』 ……ラブ………、ろちおん…? 「あきくん…」 「ん?」 「ろちおん、ってなに?」 「う〜ん……、ふふっ、それはね十碧、“ローション”って読むんだよ」 「ああ!ローションか! えぇと、それじゃあ、…ラブ、ローショ…ン………、っ!?」 バッと顔を上げて、あきくんを見つめる。 「もう少し、英語 頑張ろうか」 ちがうちがうっ! そんなコト言うタイミングじゃない!! 「堂上はね、……まあ、十碧だったらいいか。堂上は、母さんや兄さんと同じで、同性異性に(かか)わらず愛せる人」 「えっ!?……あ…、そうなんだ……」 それ、まあ十碧だったらいいか、で勝手にバラしていいやつなの!? ってそれも違うっ! 堂上先輩の性嗜好じゃなくて、あきくんがこれ買ってきた意図を知りたいんです俺は!! 「同性と付き合ったこともあるからね、知ってるかな、って電話して聞いてみたんだ。男同士の、……その、…仕方を」 「え、あ、……おう…」 驚きのあまり、意図せず男らしい相槌を打ってしまった。格好良い十碧くん降臨。 「堂上がそんな事情だから、僕も十碧に片想いしてたこと、話すことが出来ていて…」 「……うん」 「平茅もね、男相手に恋をしたのは初めてだって言ってたけど、」 「えっ!?」 「兄さんのことが好きで」 「は、陽成さんを…!?」 「誰にも言っちゃダメだよ」 ふんわりと悪戯っぽく微笑みながら、あきくんは俺の唇に人差し指を押しあてる。 「…なんて。そんなこと確認しなくても、十碧は誰にも言わないよね」 ……言わないよ。言わないけどね? あきくんだって、勝手に言っちゃダメでしょーがっ! 友達のすんっげー秘密じゃん、それ!

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