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第104話

いや、よく考えたら、どうでもいいんじゃないか、そんなの。 平茅先輩と陽成さんのどっちが受けか…? 別に目の前で繰り広げられるわけでも無いし、ほんと考えるだけ無駄な時間だった。 なにやってんだ、俺は! それよりも─── ローションですよ!? ラブなローションですよ!! それを、堂上先輩からヤり方を聞いたあきくんが買ってきてくれたんだよ!? あきくん! 覚悟決めたの⁉ 「その、…十碧……」 緊張な面持ちで言葉を探すあきくん。 俺はそれを、掴まり立ちからの、一生懸命に歩き出そうとしてるヨチヨチな赤ちゃんを見ている時と 実に同じような気持ちで見守る。 がんばれ…! がんばれ…! 「今から、その……、どうですか…?」 思わずブハッと噴き出した。 だって…なんだその決まらない誘い文句は。 王子様感ゼロじゃん!! 「十碧…、僕は真剣に…! さっき断っちゃったし、こういうの初めてだから、なんて言ったらいいか…わからなくて…」 ちょっぴり赤く染まった顔で、拗ねたみたいにチョンと口を尖らせるあきくん。 「うん。ごめんごめん」 訊かないで、キスして押し倒しちゃっても全然オッケーなのに、律儀だよねー。 ほんともう、優等生なんだから。 でもさ、それって…。俺のこと大切に考えてくれてる証拠で。 愛されてる…って心から感じさせてくれる行為で。 やさしくて、愛しくて、きゅんってする。 慣れない感じも可愛くてさ…。 ホントはもっと、うっとり溶かされつつ押し倒されたかったんだけど…… まあ、どっちも童貞処女じゃ仕方ない。 二回目以降に期待です。 俺も色っぽく受けられるように頑張ります! 隣に座るあきくんの胸にぎゅって抱き着いて、顔を上げる。 「いいよ。……しよ?」 誘うように微笑んだ瞬間、強く体を抱き締められた。 わぶっ…! って声を上げちゃうくらい、勢い良く。 「……十碧…、ありがとう…」 感極まった息遣いでそう告げられて…。 髪にスリ…と頬擦りされる。 その瞬間 俺の心臓はギュッと鷲掴みされたような苦しさを訴え─── 俺は、あきくんの体をぎゅ〜っと強く、抱き返した。 この痛みを与えられるのも緩和できるのも、あきくんをおいて他に居ないから。 「……俺の方こそ、ありがとうだよ」 俺からも、頬を擦り付ける。 「好きになってくれてありがとう。  大切にしてくれてありがとう。  それからね……、  好きだって、伝えてくれて……ありがとう」 「……どうしよう…。本当に、しあわせすぎて泣きそう…」 「あはは、泣いてもいいですよ~」 「ゔ……、少し…我慢する…っ」 そこから抱き合ったまま、あきくんは精神状態 整えて。 約五分………… ……そうな、そうだよな。 俺たちどっちも初めて同士。 気持ちを確かめあって、抱き締めあって、時間経過───からの《ハジメカタ》なんて、分かりっこないよね!? もう未知の世界だよね!? 俺たち、こっからどうしたらいいの───!!?

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