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第105話

「……十碧が可愛すぎて尊い…グス」 おっ…とぉ……。何か言い出したぞこの人。 「もう…、好き過ぎて困る……」 「………ブッ…」 「十碧!? どうして笑うの!」 いやいやいや、誰だって笑うポイントでしょ、そこ。 「俺、言っても 可愛すぎってほど可愛くないからね」 そりゃ、周りから言われることも多いから、“普通”には可愛いのかもしれない。けど、それは決して、あきくんレベルの“特別”じゃない。 男なのに寧ろ女の子より可愛いよね、って10人中4~5人が褒めてくれるくらいの、上の下から中レベル。 男子校のモテないメンズが、お前なら男でもいい!ってチヤホヤしちゃう程度の可愛い。共学に通ってたなら、今ほど好き勝手やってられないだろう事、自分でだって理解してる。 それに比べてあきくんなんて、世界で少なくとも五本の指に入るカッコ良さじゃん。 俺から見たら、世界どころか宇宙一! 地球内じゃ収まんない。綺麗でキラキラ、唯一無二の存在。 俺がそんな人と釣り合えてるなんて、到底有り得ない話だ。 でもだからこそ、「あの女の子と並ぶと美男美女でお似合い」なーんて、あきくんが誰かと噂されちゃうかも、って不安は一切無用。 あきくんと釣り合う美女なんて居ないからね。 だったら、あきくんが『世界でいちばん好きな俺』が、誰よりお似合いな相手でしょ! ……そんな事を考える俺の耳に、突然割り込んできたのは、 「何言ってるの!」 って、怒った声。 「十碧は誰よりも可愛いし…、ううん。誰よりも、って比べる相手も居ないくらいに可愛いんだから」 それは……、恋は盲目ってやつですね。あきくん…… 「それに、僕の初恋の人で、初めての恋人なんだから。僕のことを王子様って言ってくれるなら、十碧も否定しないで、自分が誰より綺麗で可愛いってことを、理解して受け入れてください」 「! 俺、はじめての恋人なの!?」 「? 当たり前でしょう? 初恋なんだから」 っっしゃーっコラァッ! くっそ、陽成さんめ! やっぱ俺が初恋人じゃん! よくも しらばっくれやがったな、あのオッサン!! おめでとう! 十碧さん連勝(V2)です!! 「……十碧?…どうしてガッツポーズ…?」 それは貴方のお兄さんに不安にさせられてたからです!! ………えー…、さてさて。 不安も喜びと自信に変わったことだし…? そろそろ……、じゃないスかねぇ…、あきくん? でも、さすがにここで、「そろそろヤリませんか?」なんて誘い文句を掛けられるほど、俺は空気読めない君でも、ロマンのわからないヤツでもない。ってぇワケで…… それに……。可愛い、スリスリ、イイコイイコ、可愛い、スリスリ、イイコイイコ♡ の繰り返し。なんだか気持ち良くなってきちゃったんだよねぇ……… もう今日はこのまま、抱き締められてスリスリされるのを楽しんでてもいいのかな……、なんて。 「十碧、…ごめんね」 「……! えっ…?」 唐突になんの“ごめん”!? 「その、……堂上から、はじめ方…を聞くのを忘れて……、その、スタートがわからないんだけど、」 「え、あっ、…はい……」 「もう我慢できそうにないので、………初めます。よろしくお願いします」 「は、…はい。…よろしくお願いします……」 ………………ん? ───って、ずっと我慢しながらスリスリしとったんかーーいっ!!

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