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第109話
「十碧の心を悩ませてることぜんぶ、僕に話してくれる?」
真正面から俺だけに向けられた真摯な瞳に許された答えはYESだけ。
コクンと頷くと、俺は手をそっと下ろして……
「あっ、こら。……突然なにしてるの」
あきくんのおっきくなってるモノに指先をゆっくり這わせた。
……大丈夫だ。
ちゃんと反応してくれてる。
……でも…………
「あの、ね……あきくん…」
「うん」
「え、と………、失敗しても、気にしないでね」
「えっ…?」
「えっと、気にしないじゃなくて……気に病まないで?」
「え……、失敗前提なの…?……うぅん…、確かに初めてだから、頼りないとは思うけど…、うん、そうだよね……。ごめんね、十碧。安心させてあげられなくて」
「あっ!違う違う!違くって!」
なんでそこで申し訳なさそうに謝っちゃうかな!
そんな理由での失敗なら、俺あんま気にしないし、怒んないよ。
2人共はじめてだし、仕方ないよね。
ゆっくり、俺たちのペースで進んでいこ。
ってなるよ。
上手く出来なかったことだって、そのうち笑い話に出来るやつだよ。愛しい失敗だよ。
「じゃなくて、……いざ!って時になって、……やっぱ無理かも…ってなっても、それって、あきくんの所為じゃないから……、俺は、大丈夫だから、傷付かないで俺の隣で前を向いて生きていってほしいなぁ、と……」
喋りながらも、目の前のあきくんからは目が逸らせなくて。だから、どんどんと顔が強張っていく様だって………
あきくんの心情が分かりすぎるくらいに伝わってくる、こんな間近で。
じっと見つめてくる2つの瞳から逃げるように、目だけ俯けると、
「かように思っております……」
そうして言葉を結んだ。
いや、別にふざけようと思ったとかじゃなくてね!
丁寧に纏めようと思ったら緊張のあまり…ねっ?
あるじゃん!そういう時!
敬語使おうとしたら頭こんがらがって、語尾に「ござる」付けちゃった、とか!
「………ぷっ」
「───!!」
「ズルイよ、十碧。怒ろうと思ったのに、笑わせるなんて」
「!! 怒っちゃヤダッ!」
「もう……、怒ってないよ。絆されちゃったから」
は…ふぅぅーー………
怒られるトコだったのは回避出来たらしい。
「で? どうして僕が失敗すると思ったの? EDなんじゃって疑われた?」
「いえっ!そんなことはっ!!」
目一杯首を横にフリフリ!
「じゃあ、誰かに何か吹き込まれた?」
「っ!!」
エスパー!!
「兄さんでしょう?」
「!! 何故それを!?」
思いっきりビックリした俺を小さく笑って小首を傾げると、
「何を言われたのか話してご覧。ぜ〜んぶ」
あきくんは、笑って誤魔化そうとした俺のほっぺたを両手で挟んでしっかりと前を向かせ。
「ね?」
有無を言わせぬキラッキラの笑顔で、俺を威圧……いやいやっ、ええと……、説明を求めたのでした。
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