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第111話
「あきくん、途中でへっこんでたじゃん!」
「え…? へっこんで…??」
「そうだよ! 俺が迫ったら途端に萎えてたーっ!!」
お風呂の中で、俺を膝に乗せた途端の萎えちゃってた事件。
あれってやっぱり、座った俺の、男の部分が触れた。その感触が、気持ち悪いって思ったからじゃないのかな…?
どんなに可愛くても(これ俺が思ってるんじゃなくて、あきくんの主観だから!)やっぱり男の体なんだ…。なんて素に戻っちゃった、とか。
そんな心配で俯いちゃった俺の頭を優しく撫でながら、だけどあきくんは少し気不味そうな声音で。
「……ああ、あの時は……、素数を数えて心を無にして、なんとか堪えてたんだよね…」
「素数……」
なんだか変なことを言い出した。
えっと……。素数って、1以外で割り切ることの出来ない整数、ってやつだよね。
確か、1、3、5、7、11、13、17、19、23、…う〜ん……27!…は3×9の答えか。偶数は除外されるから、次は、……29…?
──って、素数なんてどうだっていいんだよ!
「うん。541まで数えた」
「541!?」
三桁の素数なんてあったのか…!!
俺なんて29までで諦めたよ!
「無知なままで十碧に手を出しちゃいけないって思ってたから、ね…。素数で気を散らせなくなってからは、この子はヴィーナスだ、って言い聞かせて…」
「ヴィーナス…の誕生……?」
「裸…だったから………」
「あ……、うん………」
わ〜お、俺ってば芸術品〜〜………
「……んじゃあ、ヤリ方覚えた今なら、なんの問題も無いってこと?」
「うん。すべて十碧の杞憂です。もう、萎えさせる必要もないしね」
恥ずかしそうに笑いながら、あきくんはそっと小首を傾げた。
ちくしょう! なんて可愛い表情 しやがんだ!! 俺の王子様は!
にしても………
───なんてこったい。
すべて陽成さんに仕組まれたミスリードだった、って事じゃないか!なんて巧妙な!!
おのれ、これが噂に名高い孔明の罠か!!
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