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第3話
「……また浮気された?」
「は!?……へ?」
労るような優しい声の辛辣な言葉に、随分と間抜けな声を返してしまったと思う。
「あ、その前に。僕は七瀬 玲仁 、3年です」
「は…ぁ…、七瀬先輩…」
「よろしくね」
「…よろしくお願いします」
「うん」
やっぱりこの人、3年生だったか。
───じゃない!今はそれじゃないよ!!
なんで知ってるの、浮気されたこと!?
俺っ、付き合ってるのも内緒にしてるのに!友達だって知らないのにっ!!
「あのっ、おれっ」
「あ、うん。知ってるよ」
だからなんで~~っ?!
「1年の鈴原 十碧 くん」
「え……名前?」
「あれ? 鈴原君だよね?」
「あ、…はい。鈴原です…」
って、知ってるって名前のことかよ!
焦って損───いやいやいや、損じゃない!この人言ったし!“また浮気”って!
あ、でも………
「3年の先輩が、良く1年の俺なんかご存知でしたね」
部活も入ってないから年上とはほぼ接点のない俺。(約一名を除いては)
体育祭で目立つでもない、生徒会の役員でもない、ただの一生徒のフルネームをニ学年も上の先輩が知ってるなんて、ちょっと不思議だ。
そう思って訊ねれば、先輩は一瞬目を大きくして、それからプッて噴き出すと、「鈴原君は結構有名人だよ」と言った。
「有名人?…ってなんですか」
こんな一般人、有名になる意味が分からない。
「 入学式、3年は強制参加だけど2年は任意参加なんだ。にしては、上級生の数、多かったと思わない?」
「え、そうなんですか?」
あんまり覚えてないけど、先輩が言うならそうなんだろう。
「入学式はね、新入生の品評会なんだよ」
品評会…?
「うち、男子校だろう。女子が居ない。だから、可愛かったり綺麗だったりする子を、ね」
ね、って!その可愛かったり綺麗だったりする子をどうするつもりなんだよ!?
「で、鈴原君は一番株だったんだけど…」
「はい?!」
「2年の笹谷がね、自分のものだから手を出すな、って」
「はあっ?!」
自分で秘密にしろって言ったくせに!?
何勝手にぶっちゃけてやがる!鞍馬のヤロ~~~っ!!!
「そんな訳で、鈴原君は有名人なんだよ」
クソッ、全部アイツの所為じゃねーか!
鞍馬のヤツめーっ!!!!
「まあ彼が言わなかったところで、よく一緒に居る姿が目撃されてたり、2人の間の空気っていうか雰囲気がね」
「…そう…でしたか……」
アイツの所為だけじゃなかったとは……!
笹谷 鞍馬 は、俺の恋人だ。不本意なことに。
思いっきり浮気性の!サイテー男だ!!
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