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第4話

鞍馬は同じ中学の1コ上の先輩。 切欠(きっかけ)は忘れたけど、会えば言葉を交わす程度に親しくしてる先輩だった。 告白はあっちから。 俺より1年早い鞍馬の卒業式の後、呼び出されて告られた。 なんとなく…自分は女の子を好きになれない性質(たち)なんだと気付いてたから。 鞍馬のことは普通に好きだったし。 断る理由も見つからなくて、オーケーして、早まったと気付いたのはそれから1ヶ月後。 『やっべー!  今駅裏のラブホから笹谷先輩が女と出てくんの見ちったΣ(//ロ// )  やっぱ高校生ってちげーのな!』 興奮しきりのメッセージは、クラスの仲良し5人のグループLime(ライム)(SNSアプリ)から。 ───は…!? ラブホ…?……女!? ……えっ、…待て!いや、まてまてまて、──女!? てっきり先輩も男が好きなんだとばかり思ってたから、まず相手が女だってところに思考を奪われた。 『それ、どんな女だった?』 『巨乳のお姉様(* )( *)』 巨乳って…!! 『ライちゃん、サイテー.........( •´д•` )』 『ああッ、怜ちんに引かれた…!』 『引いてるの怜ちゃんだけじゃないからね( ˘•ω•˘ )』 『月ちゃんまで!?∑(゚д゚lll)ガーン  なんかプリチーコンビに嫌われてんだけど!  どうしてくれんの、トアァァッ!?』 『うるせー、くたばれ  もっと嫌われろ』 『美人の冷たい言葉キッツい。゚(っω`c)゚。  ライちゃん哀しみで死に絶えそうだよ、トア!』 『安心しろ、来生。骨は拾ってやる。』 『ハッシー°+。:.゚(*゚▽゚*)゚.:。+°』 『骨になるまで放置するんだね!  流石橋神様♥』 『ハッシーっっ˚‧º·(˚ ˃̣̣̥᷄⌓˂̣̣̥᷅ )‧º·˚』 先輩、女もイケる人だったんだ…… 浮気された事とか、同志(なかま)じゃなかった事とか、中々にショックは大きくて…… 会えば甘やかしてくれるし、ちょっと意地悪だけど優しいし。 でも、キスはするけど、やらしめのスキンシップは無かったな、と思い付く。 ……そっか。女が好きなら、俺の男の身体にそんな気になる訳もないじゃん。 『巨乳の女が好きだったんだね。』 たった一言、先輩宛に送ったLimeメッセージ。 嫌味ったらしかったかな…… そんな風に思ったところで取り消せないからもう遅い。 それに、もっと言わなきゃいけないことがあるじゃん。 もう1回メッセを送ろうと目を戻すと、最新の既読の文字が見えた。 もう見たのか。 まあいいや。 『他の人が良いなら、浮気にならないように別れましょう。』 送信をタップしようとした時だった。 『笹谷鞍馬』 ディスプレイに映し出された名前と着信画面の照れ笑いの写真に、思わず着信を押していた。 「トアか?悪かったな。もうしねぇから、機嫌治せよ。本命はお前なんだからさ、別れるとか言うなよ?」 その言葉に、何度絆され許してきたことやら………

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