11 / 120
第11話
翌日───
七瀬先輩から言われたことをちゃんと聞いて、お風呂でよく温まって、いつもより大分早くベッドに入った筈の俺は、
意識が朦朧となるほどの高熱に魘されていた…!
朝のことは記憶が曖昧だけど、
なかなか起きない俺をどやしに来た母さんが、顔を見るなり慌て出して、首の後ろが冷たくなったと思ったらおでこもヒヤッてなって、布団が重くなって。
「横になったままでいいからこれ飲んで」
ペットボトルと錠剤を渡された。
「いい?ここに置いとくから、起きたらまた水分取るのよ」
「うん……、がっこー…」
ピピッ
「はい、38.7度。でしょうね、顔見りゃ一目瞭然だわ。と言う訳で、学校アウトー」
「やすむ…?」
「当たり前でしょ。学校には連絡入れとくからゆっくり寝てなさい。…あー、どうしよ。今日ランチタイムでパート入ってんのよね。休めるかなぁ」
「…かあさん、おれ、ひとりでだいじょ…」
「はい、おだまり。お母さんは仕事より十碧が大切なんですー。大事な息子が高熱出して魘されてんのに、見捨てて独り置き去りにする母親が何処に居ますか。なんなら仕事なんかタンカ切っていつでも辞めてやらあ!…って、でもランチメンバーは好きなのよね…。誰か代わってもらえる人探さなきゃー」
ーーーーーーーーー
「ぅ…ん……」
「あっ、十碧、起きた?丁度良かった。ご飯食べられそう?」
「……ううん」
「今、七瀬君って綺麗な先輩がお見舞い来てくれてるんだけど、分かる?上がってもらう?」
「ななせ…せんぱい……、うん…」
「あらら、嬉しそうな顔しちゃって。じゃあちょっと待ってなさいね」
ーーーーーーーーー
──PTA 成人委員会グループLime──
『こんにちは。1年の鈴原です。
突然で申し訳ないのですが、どなたか3年の七瀬君のことをご存知の方はいらっしゃいませんか?
ジャ○ーズのアイドルのようにキラキラ輝いている王子様系の生徒さんなんですけど。』
『こんにちは。
七瀬君なら中学時代から知ってますよ。』
『私も知ってます。』
『あの美形君ですよね!』
『私もわかります。
七瀬くんがどうしました?』
『実は今、熱を出して欠席している息子を見舞いに来てくれてるんですけど、本人がぼんやりしていて聞いてもハッキリしないので、家に上がって頂いても問題ない生徒さんかと心配で。』
『わかります。初めて会うお友達ってどんな子か良く分かりませんものね。
でも、七瀬君なら礼儀正しいし優しいし、先生方からの信頼も厚いので大丈夫だと思いますよ。』
『私は以前、校内で道に迷って時に七瀬くんに助けてもらったことがあります。
向こうから声を掛けてくれて、わざわざ目的地まで案内してくれたんですよ。格好良いわ優しいわで、思わず名前聞いちゃいました。
それから3年間、ずっとファンです(笑)』
『うちの息子と七瀬君は、管弦楽部の部活仲間で、1年と3年時はクラスも一緒。仲の良い友達の一人です。
家に来た時もこっちが面食らっちゃうくらい礼儀正しくてイケメンで!良い子ですよ~。
他の子の脱いだ靴まで揃えてくれたり!』
『でも、進路相談の三者面談、親じゃなくて兄弟が来てましたよ。うちの前だったんだけど。
家庭に問題のある生徒なんじゃ?』
『小学生の時、同じ登校班でしたけど、ご兄弟揃ってしっかりした子でしたよ。
ご両親も、PTA活動に積極的で、旦那さんも旗振りに参加してらっしゃいました。』
『ならその後離婚したんですかね。』
『離婚なんてとんでもない!
お正月にもご家族4人で仲良く初詣に行かれているのを見掛けてご挨拶したばっかりです。』
『鈴原さん、七瀬君ならお宅に迎え入れても問題ないと思いますよ。』
『皆さん、ありがとうございました。とても助かりました!
玄関でお待たせしているので失礼しますね。』
ーーーーーーーーー
「ほんとに良いの?おばさんは助かるんだけど」
「はい。傍に居るくらいしか出来ませんが」
「病気の時はやけに心細くなるものだから、それだけでどれだけ有り難いか。この子淋しがりだし、独りにさせたくなかったのよ。さっきも電話で店長とバトル寸前。高校生だからって、淋しいもんは淋しいわよねえ。
と言う訳で、ほんとに助かります。七瀬先輩様々」
「そんな…気にしないで下さい。本当に、僕が勝手に傍に居たいだけなんです」
「あら!うふふ、ありがとう。それにしても、こんなに優しくて美形な先輩が十碧と仲良くしてくれてるなんてねぇ」
「いえ、そんな…」
「この子、キラッキラの王子様が好きでしょ?ジャ○ーズのアイドルみたいな。七瀬君、正に理想って感じ!…といけない、もうこんな時間だ。じゃあすみませんが十碧をよろしくお願いします」
「はい。責任持ってお預かりします」
ともだちにシェアしよう!