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第14話
一眠りして目覚めた俺の傍に、先輩はまだ座ってくれてた。
廊下からバタバタ忙しない足音が聞こえてくる。母さんも帰ってきてるみたい。
多分、先輩が帰らないでくれてるのは、俺がここに居てってお願いしたから。
体を拭いて、パジャマを替えて、俺を横たわらせた後「おやすみ」って微笑った先輩が、なんでか儚く見えたから……
「せんぱい、ここにいて。おれが眠ってるあいだに、かえったらやだから」
「…居てもいいの?」
「いみわかんない。いなくなってたら怒る」
「……わかった。ここに居るね」
「うん」
少しばかり熱も下がったんだろう。朦朧としていた頭が幾らかクリアになっていた。
と同時に、
自分勝手に吐き出した言葉を思い出して、自己嫌悪に陥った。
熱が出るとどうしても甘えたになって、ひとりっ子気質な我儘暴君になっちゃって……
俺、絶対に嫌な奴だと思われた!
うわーん、先輩に嫌われる~~っ!!
「先輩ッ、ごめんなさいっ!!」
「えっ…!?…あ、おはよう 鈴原君。具合はどう?」
読んでた本から目を離して俺を見る先輩。その瞳に侮蔑や嫌悪の色は無い…けど。
「ごめんなさい、俺……いっぱい我儘…ひゃっ」
「うん、熱 下がったかな」
首に冷やっとした感触。冷えた手を当てられて、体が跳ね上がった。
「せんぱい…?」
「水飲む?喉乾いたでしょう?」
ペットボトルの蓋を開けてにっこり微笑ってくれる王子様は、まるで月の光の下 大輪の花を咲かせる純白の月下美人みたい。
綺麗だな……
見惚れてると、ん?と首を傾げられた。
それから先輩は、目を細めて笑みを深くする。
「鈴原君、ありがとう」
「え……?」
「帰らないで、って言ってくれてありがとう。
我儘なんて言われてないよ。頼られて嬉しかったし、甘えて貰えてキュンってした」
「キュンって…」
「脱がしてって言われた時は、キュンを通り越してドキドキしたけどね」
「は!…うぅぅ~……」
俺ってば、こんな綺麗な人に何をやらせてるんだ…!!
パジャマ替えさせて身体拭かせて、……寝るまで頭撫でてて、って言った憶えすらあるような……!
はぅぅ~……
「あの……、お見苦しいものを……」
「綺麗でしたよ?」
「あぅ…」
「色白でちょっとフニフニで、アレも薄ピンクで可愛かった」
「っ?!」
フニフニって……お尻!?
じゃあ、アレってなに!?
ナニなの!? 俺のナニ、見られちゃったの!?
「ふふ、上の方だね」
上の方!?
上の方って、下の方じゃないってコトで、つまり………
「あっ! 乳首…?」
「あー、鈴原君がエッチなこと言ってる」
「っ!? いっ、言ってないっ!」
「はいはい」
「普通にみんな言うことだもんっ!」
「そうだね。じゃあお母さんに起きたこと伝えてくるから、ちょっと待っててね。何か欲しいものある?」
「プリン!」
「うん。いい子で待っててね」
「は~い」
……なんとなく、言いくるめられた気がしないでもないけど。
言われた通りいい子で待ってようと、もう一度横になって掛け布団を掛けた。
我儘たくさん言ったのに、嬉しかったって言われちゃった……
優しいな、先輩。
……やっぱり誰にでも優しいのかな…?
俺にだけ優しければいいのに……
あんなに『王子様』なんだもんな。
やっぱり人気あるんだろうなぁ。
……あぁ、プリンと先輩、早く帰ってこないかな。
・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
………うぅ~ん、プリンも食べたいけど、桃缶も欲しくなってきちゃった…
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