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第15話

プリンと先輩まだかな、まだかな…。 足をバタバタ。ベッドの上でゴロンゴロン。 だけど、そんな俺の希望は無視の方向で世界は回ることを決めたのか、ノック音よりも先にスマホが電話の着信音を鳴らした。 特別に設定した、他の人とは違う曲に、思わず「うわ…」と声が洩れる。 確認したディスプレイに表示されたのは、当然予想通りのあの人で…… 「……はい、なーにぃ?」 『……なんで第一声が不機嫌だよ、トア』 「だって。なんで昨日の今日で電話して来られんだよ。未練たらたらなの?鞍馬」 別れたオトコからのラブコールなんて、冗談じゃねぇぞコラ。 そう云うのは、付き合ってる時にやってこいっつーの。 『あ?いいだろ別に。仲良い先輩後輩なんだからよ』 「あー、バッカでー。あんな社交辞令 本気で受け止めてるー」 『るせー。それより、熱出して休んでんだって?』 「っ、………」 『昼休みにお前のクラスの奴から聞いた』 「……………」 ほんと……バッカでやんの、鞍馬。 そう云うのはさ、そう言う事こそさ、付き合ってる時にやって欲しかったよ……。 『平気か?』 「……へいき」 『俺とのことで考え過ぎて熱、出したんじゃねえの?』 「………ちっげーよ、ばーか」 『…テメ、ホント口悪ィな』 「アンタとつるんでた所為だろ」 電話の向こうから、ククッて喉で笑う低い声が聞こえる。 この笑い方、嫌いじゃなかったなぁ……なんて、ちょこっとだけセンチメンタル。 そりゃそうだ。相手は昨日まで付き合ってた男だ。 スパッと一気に忘れられる訳がない。 アンタは徐々に、俺の中から薄れていくんだよ、鞍馬。 そのうち消えて無くなるんだから。 「俺の連絡先 消さないの?」 『別にいいだろ』 「えーっ!次のカレシが気にするじゃん」 『はあ?そんなヤツ居ねぇだろーが』 「居るもん! 七瀬先輩、とか…」 『あ、ソイツ朝一でお前の家訊きに来たってお前のクラスのヤツが言ってたけど、お前のなんなの?』 「なんなの、って……」 先輩は……、うぅ~ん、なんなんだろう。 一応俺のこと好きって言ってくれてるけど…… 今日ので自分には子供過ぎて無理!って思われたかも知んないしなぁ… キラッキラの王子様だし、優しいし、先輩のこと好きだって言う人、いっぱい居るよね…… 未来の恋人かも、って思ってるのはもう俺だけかもしんないし、昨日出会ったばっかだけど、もう今日限りかもしんない。 「月下美人を擬人化した王子様…?」 『………。いや、お前が何言ってんだか理解出来ねぇんだけど』 「いやいや、本人見たら鞍馬も絶対思うって!」 『そもそも何を擬人化だって?漫画のキャラか?』 「植物だよ!白くて美しい大輪の花を、月の下でだけ咲かせるんだ。…あぁ、神々しい…」 『……………』 「はっ!もう電話切るからね!俺、先輩と桃缶待ちなんだっ」 『はぁっ!? まだこっちの話が…』 「ばいばーい!」 プツッ、とな。

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