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第25話

「だから!だからさあ、っ…?」 憤る俺の背中にそっと触れる優しい手の感触。 「十碧、落ち着いてご覧。大丈夫だから」 柔らかくてゆったりとしたあきくんの声に、ガチガチに固まって尖りまくってた心が、やんわりと解けていく。 そうだよ。いつも感情的になって丸め込まれてたんだもん。落ち着かなきゃダメだ。 平常心…平常心…… ひとつ深呼吸。 あきくんにありがとうって伝えてから、改めて鞍馬を見る。 …オイ、なんだ、その不機嫌そうな顔は。 けど、どんなに鞍馬が不満を感じてたって、俺は言いたいことを変えてなんかやんない。絶対に、自分の意見を曲げないからな! 「鞍馬のそれは、恋愛感情じゃないよ」 「じゃあなんだよ?」 俺の退いた椅子に勝手に座った鞍馬は、高くなった視線で俺を捉え眉間にシワを寄せる。 くぅぅ……、見下されてる感満載! 「それは…、執着とか、独占欲とか、いろんな感情の詰まったもの。友達相手にだって持ち得る想いだよ。  俺達は、恋人同士だった期間があるから、それを鞍馬は恋愛感情なんじゃって、勘違いしてるだけ。男女だったらそのまま付き合ってても上手く行くかもしんないけど」 女相手なら何の疑問も(いだ)かずとっくに抱いてるんだろうしさ、鞍馬なら。 「恋愛の好きって、もっと堪んないんだよ?  もっとくっつきたいし、抱き締めたい、キスしたい。それ以上だって全部欲しいし、相手からもそう思って欲しい。  俺、たぶん……ネコだから、…求めて欲しいし、…でも男だから、自分からだって……って思うけど!鞍馬は違うじゃん!」 「ネコってなんだ?」 って!引っかかんのソコかよ! 「煩いなっ。アレだよ、アレ。あの……下側の…受け、ってか……」 「?」 「いや、だから、……掘られる側…って言やぁ分かる!?」 「……ナニ赤くなってやがる」 「っ…るっせーな! バカ鞍馬‼ お尻にち○ぽ突っ込まれたい側だって言ってんのっ!好きな人に犯されたいの俺はっ!」 うわ~~ん! なんでそんな口にするの恥ずかしいこと 俺が説明してやんなきゃいけないんだよ~~っ! 恥ずか死ぬっっ! ベッドに顔を伏せて、赤い耳が見えない様にクマ太(3才の誕生日にもらったクマのぬいぐるみ。ふわふわスベスベでとても可愛い)を頭に乗っける。 クマ太!俺のこと守って!隠して!! 「いや、そこまで説明しろとか言ってねぇし…」 ウソつけッ!掘られる側って言っても、まだ良く分かんねぇって顔して俺のこと見てたの誰だよ!? 「……んでさ、なんでアンタまで赤くなってんだよ?」 「え、だって、こんな可愛い子が真っ赤な顔して卑猥なこと口にしてるんだよ?」 はぅっ!? あきくんに『卑猥なこと』って言われた…!! 「それが好きな相手なら、男としては、我慢できないと言うか……、十碧も言ってたけど、もう──堪んないよね」 はうぅぅ~~………ぼふんっ 頭っ、バクハツした…っ! 顔熱いっ! あきくんがぁっ、あんな綺麗な顔でっ、なんとも男臭いことを~~っっ!! ………いったい…どんなお顔で、そんな事を(おっしゃ)っているのか………? クマ太を頭に乗っけたまま、チラ…と顔を上げると。 「──っ!!」 目が合った! こっち見てた! なんか、熱の篭ったオトコの目してた!月下美人を擬人化した王子様がっ! 俺はもいちどベッドにボフッと勢い良く沈み込んだ。

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