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第31話
靴履き換えて、上履き靴箱に突っ込んで、ダッシュで正門に向かう。
あんな綺麗な王子様、正門なんて目立つ場所に居たら色目を使うウゾームゾーに囲まれちゃう!
男子校 の狩人達に、近所の女子校のハイエナ共に。皆が俺のライバルだ!
「あきくんっ!」
正門から走り出るなり呼び掛ける。
「っ……とと」
って!居ないし。
そこに居た他の人たちに不思議そうに見られちった。
あきくん、俺は今、いらぬ恥をかきました。
だざいセンセー、俺も、恥の多い生涯を送ってます……。人間失格より抜粋。
「と~あ、どうしたの?」
「あきくん…?」
壁に向かって手を突いてたら、背後から声を掛けられた。
ちょっとジト目で振り返っちゃう。
なんで校舎側から現れるんですか。しかも制服姿で。
俺、絶対 門の外で私服のあきくんが待っててくれてるもんだと思ってたよ。
制服でも私服でもカッコイイことに変わりはないけどねっ。
「学校に用あったの?」
「んー…。他の人に遭う前に十碧に逢いたくて、木の陰にこっそり」
なんと!
俺の為に、皆に囲まれないように隠れててくれたんだね…!キラキラ
───って!
「木の陰に!? 寒くなかった?」
「逆に門の所より風が凌げて良かったかな」
わ~お、ポジティブ。
「じゃあ行こうか。何処か行きたいところはある?」
「うんっ!」
差し出してくれた手を取ってぎゅって繋ぐ。
「あのね、駅向こうのアイス屋さんで、シングルサイズが今だけダブルにキャンペーンやってるから…」
「半分こだね」
「え"……」
「十碧が2つ選んでいいから、そこから半分ずつ僕に頂戴。沢山食べたら体が冷えちゃうからね。また風邪ひきたくないでしょう?」
「あ、ハイ…」
その、にっこり笑顔の圧力と言ったら…!!
そんな訳で、ダブルのコーンを一人でガッツリ食べようとしてた俺は……
「それをカップでお願いします」
微笑み付きのあきくんの注文にポーッとした女性店員さんに、
「あっ、カップじゃなくてコーンで!」なんて俺の声なんか届くハズもなくって。
「お腹壊すといけないから、ゆっくり食べなさい」
花舞う笑顔であーんってしてくれる あきくんに逆らえるワケもなく。
「夏になったら2つ食べても大丈夫だから、今は我慢。ね?」
はい、と半ばムリヤリ頷かされ、渡された あったか~いミルクティーで身体を温めながら、ちょっとずつアイスを餌付けされたのだった。
ストロベリーチーズケーキとチョコのアイス、一緒に食べると美味いな……もぐもぐ
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