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第42話

「なんだかなぁ…。お兄さんは2人がまだ付き合ってないことにビックリですよ」 「そんなこと言われたって……」 「だって十碧くん、玲のこと好きでしょう?」 疑うこと無く、訊ねるじゃなく、確認してくる陽成さん。 そりゃあ好きだよ。好きは、好きなんだけどさぁ…… 「俺ね、アイドル好きなんですよ」 「ん?AK○みたいな?」 「じゃなくて、男性アイドルです」 グループの名前をいくつか上げると陽成さんは、ああ…、と微妙な顔をして頷いた。 男が男性アイドル好きなんて、引かれただろうか。 んでも、それが俺なんだから、しょーがない。母親譲りのイケメン好きです。 「そん中でも、キラッキラの王子様みたいなタイプに憧れてて。  んでもって、あきくんって正に王子様じゃないですか。美形で、優しくて、勉強出来て、ヴァイオリンまで弾けちゃったり。しかも両親が退魔のスペシャリストで自分もその血を色濃く受け継いだ、悪魔だって妖だってなんでもオーラで弾き飛ばしちゃうエリート戦士なんて!」 「あ…あぁ、うん…。そうなってるんだ、玲…」 「何言ってるんですか。俺、あきくんから、陽成さんの方が力が強いって聞いてますよ。イザとなったら頼りにしてますからね!」 「あ、うん……マカセテ」 「だからね、俺……」 あきくんのことは大好きだけど…… 「この上ない極上の男が好きって言ってくれるから 嬉しくて調子乗っちゃってんのか、ほんとに恋してんのか、自分でもハッキリわかってなくて……不安なんです」 ほんとに恋してんなら、あきくんなら絶対に俺のこと大切にしてくれるし、気持ちに応えれば絶対しあわせになれる。そう信じて疑う余地もないくらい。 けどさ、もしこれが恋じゃなかったら? もし勘違いのままに、俺も好きだよって伝えちゃったら……? いつかどこかで歯車が狂って…… 「俺が、あきくんを不幸にしちゃいそうで……怖い」 「───そうか……」 ぽふん。 陽成さんの手のひらが、俺の頭を優しく撫でた。 「玲仁のこと、ちゃんと考えてくれてるんだね」 「そんなの、当たり前です」 知ってるから。俺は。 恋じゃない独占欲を、恋として向けられる気持ちを、俺は知ってるから。 おんなじ想いを、好きな人にさせたくなんてないじゃん。 あきくんの哀しい顔なんて、見たくない。 「あきくんからは、卒業式に返事が欲しいって言われてるから……、それまで、よく考えようと思います」 「………うん。たいせつに考えてやって」 もういっかい、ぽふん。ふわふわ、って。 俺の頭を撫でた手で自分の前髪を掻き上げると、陽成さんはニコッて笑う。 「でもお兄さんは、玲の味方で、2人が幸せそうにイチャついてるのを見るのも好きなので。2人が上手く行けばいいな、と思っています」 「え、……イチャついてますか…?」 「無自覚なのすごいね」 イチャついてるように見えるんだ……。 俺があきくんに甘えてるからかな。あきくんの振る舞いが甘いからかな。 俺達は普通のつもりなのに、周りからはそう見えちゃってるなんて……。なんだかちょっぴり恥ずかしい…。 「十碧、兄さん、ごはん出来たよ」 「あっ、はーい」 「はいはい」 あきくんからの呼び掛けに立ち上がり、陽成さんはテレビをリモコンでオフにする。 と、ダイニングに移動しようとした俺の腕を軽く引いて、顔を寄せると耳元でそっと囁いた。 「恋愛対象かそうじゃないかの確認方法なら」 「えっ?」 「玲とのセックスを想像して ヌケるかどうか試してご覧。他の奴でも試してみて、そっちでイケなかったらヌケた奴だけホンモノだから。  誰でもイケちゃったら、そりゃもう天性のビッチちゃんかもしれないけどね」 「ッ───!?」 「十碧、兄さん?」 「はーい、今行きまーす。ほら、十碧くんも早くおいで」 ~~~っっ/// あの人っ!童貞処女のまっさらな未経験者に何言い残してくれちゃってんの!? 俺…おれっ、夢みたいに綺麗な妄想ばっかで、後ろに指だって挿れたことないんだからぁっ!!!

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