46 / 120
第46話
『十碧?こんにちは』
「はうっ…!? ……こんにちは…」
あきくんだったぁ………
『今、電話だいじょうぶ?』
「だっ、だいじょーぶっ!」
『?…なにかあった?』
「ううんッ!何も無いですっ」
俺の目の前に“ナニか”はあるけどねっ…。
でも、それは“何かあった”ってこととは違って、“ナニか”しようとしてただけだから。
“何も無い”はウソじゃない!
って自分に言い聞かせて、めいっぱい平静を装う。
『じゃあ、緊張してる?電話で話すと、ちょっと声とか変わって聞こえるよね』
平静装えてないじゃんおれぇぇっ!!
だけど、そんな俺の動揺に気付かなかったのか、見逃してくれたのか。
実は僕は緊張してます、って。
冗談みたいに言って、あきくんはクスリと笑った。
んん、確かにいつもよりちょっと低く聞こえてくるけど……
イイ声なのに変わりはないです。
それに、この状況、さ。
耳元で囁かれてるみたいでキュンってしちゃう。主に胸と下半身がキュン、ジュンって。
『ごめんね。今日逢えないのは僕の予定があるからなのに…』
律儀に謝ってくれるトコにもきゅん♡
『ここのところ毎日逢ってたから、なんだか十碧が隣に居ないと、淋しくて……』
「っ───」
はあぁぁぁ~~……っ///
きゅぅーんってした!
いま超キューーンってした!!
俺がいなくて淋しくなって、電話しちゃったの!?
あんなに綺麗で優しくて女にも男にも不自由なさそうな王子様が!?
そんなん言われたらもうっ、思いっきりぎゅーってしたくなっちゃうじゃんかあっ!!
『十碧は?…淋しくない?』
「淋しい…です…っ」
『……うん。うれしい』
ほんとは俺もちょー淋しくて、昨夜はあんまり眠れなかったんだけど。
起きてからはひとりエッチの準備と覚悟を決める事でいっぱいいっぱいで、淋しいとか感じる間もなかった。
そこはごめん。ほんとにごめん。
『明日は朝一から大丈夫そう。十碧、好きな時間にうちにおいで』
「うんっ。行く!朝一で行く!」
『……うん。ふふっ』
俺の食いつきがあまりに良かったせいか、電話の向こうであきくんが笑う。
不機嫌を滲ませながら「なーに?」って訊ねると、向こうは頗る機嫌良さそうな声で。
『だって、十碧がエッチなこと言ってくるから』
「え"っ!?」
ともだちにシェアしよう!