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第53話
ドリンクバーのコーナーで、何飲もうかなぁ?ってキョロキョロ。
「僕、オレンジジュース♪」
やっぱり可愛い怜にちょっぴり癒やされて。(だって、高校にはこんな可愛いやつ一人もいないし)
「月都は何飲むの?」
「ストロベリーティーにする」
真剣な顔で選んでたかと思うと、ティーバッグをひとつ取って笑顔で見せてくれる月都も可愛い。そして可愛い子は飲む物も可愛い。
俺も見習って、なんか可愛いやつ飲もうかな。
あ、それとランチスープも一緒に取って帰ろ。
スープはドコだっけ。またキョロってして。
「あれ?……十碧?」
聞き覚えのある声で名前を呼ばれて、心臓がどっきん!って跳ねた。
「わっ、わぁっ!」
目の前に、俺の探してたランチスープの器を持った王子様が……!!
「偶然だね、十碧。こんな所で会うなんて」
まさかの出逢いに嬉しそうに眩 くはにかむ王子様。
恋する俺のハートはその笑顔にドッキュンコだよ!
「あきくん…、スープ置いて」
「うん?」
首を傾げながらも、それを台に一時避難してくれるあきくんに。
「逢えて嬉しいです」
気持ちを伝えて、ぎゅって抱き着いた。
誰に見られてたって良い。寧ろ皆、見ればいい。
この人は俺のものなんだから、ちょっかい掛けようなんて思うなよ。って、大牽制。
「どうしたの、十碧。甘えん坊?」
「うん」
頭を撫でてくれるから目を閉じる。
あきくんが小さくくすりと笑ったのが聞こえた。
「ここだと邪魔になっちゃうから、僕たちの席に来る?」
「あきくんも友達と一緒?」
「うん。十碧のこと紹介したいから、来てくれる?」
「なら俺も、あきくんのこと紹介したい!」
「ありがとう」
頭をやさしくもうひと撫で。
抱き着いてた腕を解くと、「ドリンク取っておいで」って、あきくんは俺の分のスープも代わりに取りに行ってくれた。
もう、その優しさに俺の胸はキュンキュンだよ…
さて!ここは俺も可愛いところを見せないと。
可愛い飲み物……やっぱり怜を見習って、オレンジジュースでいっとくか?
グラスに軽く氷を入れて、ジュースを注いでると、背後から背中をつんつん突付かれる。
「と~あ。あの、王子様みたいな人はだーれ?」
振り返ると、興味津々な様子の怜。
こらこら、可愛い子がそんな顔しちゃいけません!って言いたくなるよな表情でニヤニヤしながら俺を見上げてる。
「俺の王子様♡ ちゃんと紹介するから」
「とあ、ニヤけてる~」
「怜だってニヤけてるからね!」
「十碧っ、ジュース溢れるっ!」
「あっ、ヤバッ」
怜と話してて目を離してた所為で溢 れそうになったオレンジジュースは、だけど月都の静止で事なきを得…るには指を離すのが少しばかり遅れて。
零れはしなかったけど、ギリギリ表面張力で留まってる状態。
これを零さず運び切るには、果たしてどうするのが正しいのか……
俺のジュース運び能力じゃ、床ジュースでビチャビチャにしちゃう。
ティーソーサーにでも乗せてくか?
「十碧、そのままだと危ないから少し飲んでから持っていこうね」
「ハッ!その手があったか!!」
流石春からK大生!
やっぱりあきくん天才か!!
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