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第54話
ジュースとスープを持ったまま、先にあきくんのテーブルへ向かう。
知り合ったのがもう3年生の自由登校が始まってからだったから、俺、あきくんの友達って1人も知らないんだよね。
どんな人があきくんと仲良いのか、興味津々。
「堂上 、平茅 、十碧が居た!」
友達と話すあきくん、ちょっと幼くてテンション高くて可愛いなオイ!
てかあきくんの席、このテーブルでしたか…!
あきくんが紹介してくれたのは、元生徒会長の堂上先輩と、元剣道部主将の平茅先輩。
俺がスルーしたイケメンテーブルの男前(平茅先輩)とイケメン(堂上先輩)の2人だった。
まあ、あきくんも俺が自分の友達にポーッとしてるよりか、スルーされてた方が安心だろうしな。
あきくんの友達、王子様系じゃなくて良かった!
うん。優等生はやっぱり優等生とつるむんだなぁ…って感想。
3人並んでると、ドコに出しても恥ずかしくない、学校の代表、模範になる優秀な生徒を揃えましたって感じだ。
ちなみに、あきくんは元管弦楽部部長で第一ヴァイオリンでコンマスだったらしい。なんか、オケ(?)で一番のポジションらしい。よくわかんないけど、流石あきくん!カッコいい!
「はじめまして。鈴原十碧です」
主人がいつもお世話になっております、って続けようかと思ったけど、相手が2人とも真面目そうな人だからやめた。
うち一人でもシノや西野みたいな人だったら、かましてたかも。
「近くで見ると益々可愛いでしょう?」
なのにあきくんはキラッキラのドヤ顔で、嬉しそうにそんな風に俺を紹介する。
ちょっ、やめてくださいドヤってるあきくん可愛すぎるから、こんな公衆の場で皆に見せちゃうの勿体無い!
ちょっとホントもう、この人突然のギャップ萌えフィーバーで俺のこと萌え殺すつもりなの!?
陽成さんと話してるあきくんも可愛いけど、友達と話してるあきくんもまた秀逸だなオイ。
「…なるほどな」
元剣道部首相の平茅先輩が、難しい顔して頷いた。
なるほどって…なんだろう?
俺、あきくんの友達のお眼鏡に適わなかった?
…確かに、全然優等生じゃないから、良い影響は与えられないと思うけど……
あ、それに俺が男だから?
あきくんから好きって言ってくれたから今まで全然気にせずに来ちゃったけど、理解の無い人から見たらきっと俺なんか、あきくんを惑わすとんでもなく悪いヤツで……
俺、この人たちに疎ましがられてんのかな……?
胸から溢れ出した不安を一人じゃ受け止めきれなくて、あきくんの腕にぎゅっと抱き着いた。
「なに?なるほどって。平茅、感じ悪い」
俺の心中を察してくれたのか、あきくんは平茅先輩にジト目を向ける。
って、その顔も新鮮!幼くって可愛いし!
スマホ席に置いてきちゃったから、心のアルバムに貼り付けるっ!
一瞬で、落ちかけてた俺の気持ちが浮上した。
やっぱりあきくんはスゴイ!
この人たちから反対されても、俺、あきくんのこと離したくない!
「いや、陽成さんから聞いていた通りだと思ってな」
「兄さんが?なんて?」
表情を曇らせたあきくんに、平茅先輩はフッと笑みを零す。
それは決してあきくんの事を馬鹿にするものでは無かったけど。
「あれは好きなんてものじゃない。溺愛だ」
言うなり顔を伏せ、肩を震わせた。
前言撤回。ちょっと馬鹿にしてる!
「ああ、溺愛ね。確かに」
元生徒会長の堂上先輩まで、クツクツ声を潜めて笑い出す。
「ああもう、煩い。十碧、こっちはもういいから、十碧のテーブルに行こう」
あきくん、3人で居るとイジられキャラなのかな?
「とーあ。今、失礼なこと考えなかった?」
「え……、あ、いや、考えてませんでした…」
「別に普段からイジられてるわけじゃなくて、僕に好きな子が出来たのが楽しいだけなんだから、この2人は」
「あ、そうなんだ」
その不用意に打った相槌の所為で、直前のウソがバレ、俺まであきくんからジト目を向けられることになったんだけど……
ヤバい、ジト目かわいい…
見慣れない表情につい見惚れて、キューンってしてたら。
気付いたあきくんはちょっと困った顔して微笑って、『負けました』とばかりに俺の頭を子供にするみたいによしよしと優しく撫でてくれたのだった。
(先輩たちはずっと肩を震わせて笑ってた。)
何はともあれ、あきくんの友達に嫌われたんじゃなくて良かった!!
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