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第55話

俺はオレンジジュースのグラスを持って、あきくんは俺のスープの器を持ってくれて。 今度は俺のテーブルに移動する。 空いた右手をあきくんと繋ぎたかったけど、 「道が広くないから、ね?」 手に触れようとした寸前、ニコッて笑って頭を撫でられた。 チッ、先手を打たれた… でも、それでも今、俺はゴキゲン全開だ。 去り際に、先輩たちから掛けられた言葉に浮かれてるから。 「片想いの時を知ってるからな。七瀬が幸せそうで、俺達も嬉しいよ」 「鈴原君。七瀬のこと、よろしくね」 「…まだ片想いなんだけど」 …うん。両想いだって確信してるのは今は俺だけ。 早く「好き」って伝えたいな…… 「昼休み明け、死にそうな顔して教室に戻ってきたかと思えば、また泣かされてたって自分まで泣き出したりしてな」 「平茅っ…!」 「今日は元気だったよ。友達叩いて笑ってた、って嬉しそうに報告したりな」 「堂上まで!怒るよ!」 友達叩いて笑ってたって…。俺、ヤバいヤツじゃん。 まあ、十中八九相手は西野だろうけど。 イジられてるあきくんが珍しくて可愛くて、ほんとはもっと聞いてたかったんだけど。 それにね、俺のこと見ててくれた、俺の知らないあきくんのこと。もっと、知りたかったんだけどな。 早く行こうって急かされて、慌てて先輩たちに挨拶をして席を離れた。 「あっ、来た来た!とあ、おそ~い!」 俺たちの姿が見えた途端のブーイングは、ほっぺた膨らませた怜から。 ちっちゃい怜はごはんを食べる時も、ほっぺがプクッてなっちゃう小動物系。ヤバい可愛い。 怜はあざといくらいが丁度いい。 おんなじ可愛いでも、月都は食べ方上品だよね。控えめ天然美少年。 この2人はホント、見てるだけで癒やされる。 美少年萌えをありがとう。 テーブルの上には、もうデザート以外の料理が全部揃ってた。 お待たせしまして……って、誰も待ってないじゃん!皆とっくにモグモグ済みじゃん! 「なんで待っててくんないの」 文句を口に出せば、謝ってくれたのは月都だけ。 あーっ、もう月ちゃん可愛い! 一人食べ続けるシノ、お前は怜にフラレちまえ! 「ん?なに、トア、俺に見惚れて。惚れた?」 「……ホントお前フラれろよ…」 「えっ、なに!? なんですぐそういう事言うのトアアァっ!!」 うるせー!睨んでただけだっての! 手を伸ばすな!俺に指一本触れんじゃねえ!!

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