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第56話
「ライちゃんは放っといて。王子様、紹介してくれるんでしょ?十碧」
一人騒がしいシノに、更に追い打ち。怜は恋人を「煩い」と瞬殺して、そのおっきなキラキラの瞳であきくんを見上げた。
「むー…」
「なーに?」
「怜は可愛いからあきくんのこと見ちゃダメ」
「あははっ、ヤキモチだ」
「月都もダメ」
「えっ、…ひどい」
「十碧が一番可愛いんだから心配しなくていいのに」
くすりと笑われて見上げると、頭をやんわり撫でられた。
愛しいって想いを雄弁に語る瞳がフワリと細められて………
っ!!………やばいやばい、ちゅーしたいっ!
そりゃ妄想じゃもっとスゴイ事してる俺とあきくんだけど、現実じゃまだほっぺにちゅーだってしてないんだよ!?
そんな艶っぽい切ない嬉しい愛しい、色んな感情が重なった眼差し向けられたらさ!
男・鈴原十碧としましては!くっついて甘えてちゅ~っ♡てしたくなっちゃうでしょーがっ!!
「あぁ…、あきくんが尊すぎて辛い…」
「え…、大丈夫?十碧…?」
「とあ~、しょーおーかーい~っ」
「え……あ…、ハッ!」
いかんいかん、また無意識にあきくんに見惚れちゃってた。
最近の俺あるある発動しちゃってたよ。
気を取り直しまして。
「俺の学校の先輩、七瀬玲仁様です」
「十碧、様付けはやめようね」
いや、あまりに麗しいもんだからつい…。
また苦笑されてしもうた。
「はじめまして、七瀬玲仁です。橋上君はテスト最終日ぶりだね」
「はい。先日も騒がしくしてすみませんでした」
主に西野と関がな。
てか、先日“も”って、今日も騒がしくなる予定ですか、橋上先生。
「そっか。トアの先輩ならハッシーの先輩でもあんのか」
なるほど、シノ ですね。このバカが騒ぐんですね。
「つかさー、十碧ってホント年上の男に可愛がられがちだよなー。笹谷先輩と言い」
「っ───!!」
コイツ──!!
「来生、取り敢えずお前は黙ってろ」
「えっ、ウソ!トアなら兎も角ハッシーがそんな…!助けて、怜ち~んっ」
「はいはい。ライちゃんが無神経なのが悪いんでしょ。口閉じて反省してなさい」
怜に背中をポンポンされて、やっとシノが大人しくなった。
お前はそのまま永久に静かにしてろ。
「えっとね、あきくん。みんな地元の、中学の友達で…」
鞍馬の話題はササッと無かったことに。
「この可愛いのが春野怜。こっちの可愛いのが日比谷月都。んで、存在無視していいのが篠巻来生です」
「とあ、紹介が雑」
「こっちのって…」
「トアぁ、無視しないで…シクシク」
えっ…、そんな!
紹介って、特徴と名前の他に何言ったらいいの!?
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