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第57話
「それでは、チーム対抗ボーリング大会をはじめます。よろしくおねがいしま~す!」
この前はカラオケボックス。
今日はあきくんの友達も巻き込んで、ボーリング大会が始まるらしい。
「って、チーム分けもしてないくせに何始めようとしてんだよ、バカシノ」
「そーだよ、ライちゃん。よろしくお願いしますじゃないよ」
「どうするの?チーム分け、シノくんがやる?」
俺と怜、月都も加わって3人で責めれば、すぐにタジタジになるアホのシノ。
「えっと、じゃあ俺は怜ちんと同じチームで……、ハッシーは!? ハッシーお願いしますっ!!」
あ、ハッシーに丸投げしやがった。
「1年対3年でいいんじゃないか」
「なら俺、3年生チーム入る!絶対あきくんといっしょ!」
ハッシーの提案に「人数的にも公平でしょ?」と捩じ込むと、怜が「ずる~い」と頬を膨らます。
「僕も3年生のお兄様とチーム組みたい~」
「怜ちんっ!?」
「まあ、俺と平茅は分かれたほうがいいかな」
と、堂上先輩。
「なら、春野君チームと十碧チームに分けて、橋上君、日比谷君と、堂上、平茅がそれぞれグーパーしてチームに振り分けるのはどう?」
「なるほど。それなら戦力の取り合いと違って、日比谷が傷つくことも無く綺麗に分けることができますね」
「ハッシー!?その言葉で僕、既に傷付いてるからね!?」
若干1名涙目だけど、チーム分けの方法はそれで決定。
俺は『ハッシー来い…ハッシー来い…』と祈りながら、チームの代表として隠れて怜とグーパーした。
「グーの人!」
「はいっ」
「はい」
おんなじチームになったのは、月都と堂上先輩。
ハッシーを獲得したシノが俺の方を見て、
「日頃の行い…ププッ」
こっそり笑いやがったから、拳を固めてぶん殴っておいた。
でも平気。そんな暴力的な俺でも可愛いって、あきくんが言ってくれるから。
シノを殴る俺。パーフェクトかわいい!
「「よろしくお願いします」」
「うん。こちらこそ」
月都といっしょに挨拶すると、堂上先輩はニコリと笑って、2人の頭を続けて撫でてくれた。
この人、真面目そうなイケメンに見えてたけど……
近くで見ると、色気ハンパないな。
背も高いし、ちょっと屈んで目線を合わせてくれるのとか、結構萌え…
「はい、十碧はこっち!」
腰に回された手で勢い良く背後に引き寄せられた。
「あ……」
──もしかして俺、見惚れてましたか…?
──見惚れてましたね。
視線で交わした会話は、多分そんな感じ。
「十碧、パネル操作したいって言ってたでしょう? しないんなら僕がやっちゃうからね」
やば…、あきくん、ヤキモチ焼いていらっしゃる。
かわいい!そんなんされたら萌えてしまうし!
「えへへ。俺がやる~」
あきくんの膝の間にお尻をスルッと捩じ込んで、備え付けのパネルを覗き込む。
これで、天井から下りるモニターに映し出される名前を入力するんだ。
「あっ、十碧!また様付けして」
『あきひと様』で決定を押そうとしたら、あきくんに“様”を消された。
「あっ、だめっ!」
俺は俺で慌ててあきくんの決定を阻止する。
『とあ姫様』ってなんだ、姫様って!
あきくんが王子様だから俺がお姫様?そんなん言われたら照れちゃ…って違う違う!騙されるかっ!
あきくんクスクス笑ってるし!
深い意味は無……あるかも知んないけどそれはまあ…アレだけど、今のは俺のことからかう為のただのイタズラなんだから!
阻止で正解!
大体、これって他のレーンの人たちからも見えちゃうんだからね。
姫様ってどんな可憐な女の子が!?って野次馬が集まってきたらどーすんだ!
「イチャついてるねえ」
「ですねぇ」
堂上先輩と月都に、ほのぼの笑われた。
なんとなくこ恥ずかしくなって、あきくんの膝から下りてベンチに座り直す。
ひとつのレーンにベンチがふたつ。
俺とあきくんと、堂上先輩と月都って組み合わせで自然に分かれて座る。(多分俺達が離れない所為だけど)
なんか、2人で並んでる姿見てると、縁側で庭眺めながらお茶飲んでるおじいちゃん達を思い出すなぁ。うちのじいちゃんはマンション住まいだけど。
「日比谷君は、恋人はいるの?」
「……はい///」
「そう。残念」
「っっ………!!」
なに突然、後輩の友達口説いちゃってんだよ!?(元)生徒会長っ!!
この人、真面目そうなの見掛けだけだ!
じいちゃんなんてとんでもない!
「ヒツジの皮被った、とんでもない肉食獣だった!!」
「ん…? あはは、俺のこと? 下は皮被ってないけどね」
「下ネタ言うな!」
皆さん、大変です‼
麗しの王子様の傍に、いやらしの王様がいたあぁぁ……あぁ…………
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