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第58話

「堂上先輩、ぶっ倒~すっ!」 「鈴原君、俺たち味方同士だからね?」 「さあ、はじまりました!チーム対抗ボーリング大会 七瀬さん杯!」 「えっ、僕がなにかご褒美考えなきゃいけないの?」 「ダメッ!こっちのチーム月都がいるから不公平!ずるい!」 「十碧っ!?ひどいよ!!」 あきくん杯かどうかは置いといて、騒がしくスタートした8人からなるボーリング大会。 こっちチームは、俺とあきくんが適当に打ち込んだ順、 あきくん→俺→月都→堂上先輩。 あっちチームは、 平茅先輩→ハッシー→怜→シノ。 「先攻は?」 「平茅、ボーリングってやったことある?僕初めてだから、先に見本で投げてもらえると助かる」 「わかった」 平茅先輩が持ったのは、15ポンドの球だ。 さっき、男なら一度は持ってみたいでしょう、一番重いやつ…くふふ。って指を入れてみたけど、瞬時に諦めて俺が置き去りにしてきた球だった。 「平茅さんがんばって~」 「っ!? 怜ちんは俺の応援以外しちゃダメだからっ‼」 「え~。おんなじチームなのにぃ。ライちゃんのけちー」 「ガン──ッ!!」 平茅先輩が2人のやり取りにフッと笑みを零す。と、次の瞬間─── ダンッ! ギュイーン、ドゴーンッ!!! 「「「───っっ!!?」」」 「ばっ……爆発したっ…!」 「いや、爆発はしてないだろう?鈴原は面白いな」 でっ、でも、軌道からピンのトコから煙上がってますよね!? えっ、俺の気のせい?見間違い!? 上のモニターにはデカデカと『STRIKE!!』の文字。 「七瀬、手本になったか?」 「なる訳ないだろっ!」 あきくんの言葉遣いさえ乱しちゃうインパクトの強さで、大会の幕が上がった。 「ええと…、穴に親指と、人差し指と中指…」 「七瀬、人差し指じゃなくて、中指と薬指だよ。ほら、こう」 「うん……こう…」 ボウリング球を持つだけの作業にやたらと慎重になってるあきくんが可愛い。(のに、「あんな綺麗な顔で“うんこ”って言った!」とかひとり騒いでるアホのシノには正義の鉄槌をくれといた。) なんか俺、あきくんはなんでも出来ちゃう人って思い込んでたみたいだ。 綺麗で、格好良くて、勉強出来て、料理も出来て、楽器演奏も出来て、礼儀正しくて大人受けも良い、優しくて、あったかくて、頼りがいがあって、尊い王子様。こんな完璧な人に、出来ないことなんてなんにもない。って。 それがさ…… 初めてなんて思えないくらい綺麗なフォームで、腕を振りぬいて─── ドンッ! 「ぅわっ!?」 「ごめんっ、日比谷君っ!大丈夫だった!?」 「七瀬…、球は前に放らないと…ククッ」 「う…、うるさい、堂上。わかってるけど、…初めてなんだから仕方ないだろっ…」 ヴァイオリンをやってたから指を傷める可能性のある事は極力やらなかったんだ、なんて顔赤くして言い訳するあきくん。 かーわーいーい~~♡♡ 萌えすぎる!もう、思いのままに床を転げ回りたい~~っ! 「なのになんで料理上手なの?」 「包丁は極力使わないで料理するようにしてたんだよ。今は普通に使ってるけど…」 十碧に格好悪いとこ見られた…、なんてしゃがみこんで落ち込むあきくん。 ヤバい、ほんと萌え転がりそう~~っ!!

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