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第3話
兎獣人のましろは、多種にも及ぶうさぎの中で、アンゴラウサギと人間のハーフだ。
アンゴラウサギの特徴はおっとりとした優しい性格と、長くて細い美しい毛並みにある。
他種とは違い毛が伸びる速度が大変早く、放っておいてしまうと、一見するとどこに顔があるのかわからない毛玉のような風貌になるのが特徴の種だ。
アンゴラウサギのDNAを持つましろもまた、本来であれば美しく艶やかな髪と真珠のように麗しい肌を持っていた。
だが劣悪な環境で育ったましろはそうではない。
必要な食事を与えられなかったましろは、栄養が足りず肌の艶は色を失い青白かった。
手入れをすれば雪のように白くて柔らかであったであろう髪は、背中まで伸びっぱなしにされている。
細すぎる髪は絡みあい、毛先は枝毛となっていた。
それを誤魔化すかのように緩く三つ編みにされた後髪をだらりと肩に垂らして、人と目を合わせない為に伸ばされた前髪はましろの赤くて宝石のような瞳を覆い隠してしまった。
磨けば大層輝く美貌を持つましろだが、今のましろを見てその事に気づくものはいないと思うほどに少々不潔で酷い容貌をしていた。
人を恐れてしまう態度もまた、ましろの陰鬱さに拍車をかけていた。
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