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俺が俺でなくなる 過去

その後兄がどうなったのかはわからないが… 父がある日ひょっこりやって来た 母は出掛けていていなかった 父は痩せこけていた 「さなえ…遅くなってごめんな…一緒に行こう」 「やだ…やだ…離して…離して…」 「さなえ?」 その時母が帰宅した。 「何しに来たの…さなえは渡さないから!」 「みずえ!落ち着け。ちゃんと話をしよう」 「いやよ!話すことなんてないわ!」 母はあの日から刃物を手放せなくなっていた。その日も懐から取り出し父に振りかざした 父にそれを止められそれは床に落ちた 「さなえ!!それを向こうへ!!手の届かないところへ!!」 「さなえ!!私に渡しなさい!!」 「さなえ!」 「さなえ!!」 こんな二人の姿なんて見たくない… ゆっくり刃物を持ち上げた… 「どうすれば…仲直りするの?…」 「この人を刺して!!」 「そしたら優しくしてくれる?そしたらずっと側にいてくれる?」 「勿論よ!!」 「わかった」 「さなえ…」 俺は父を…父の体からは多くの血が流れていった。 その後父がどうなったのかもわからない。でも俺は間違いなく罪を犯した 恐ろしいくらいに笑い転げる母。でも… 「いやっ…いやっ!!榊!榊!!目を開けて!!いやぁぁぁぁぁ…」 「かあさん。僕…言う通りにしたよ…」 「いや!!近付かないで!!人殺し!!」 お母さんの言うこと聞いただけなのに…何で…お母さん…お母さんだって…お兄ちゃんに同じことしたじゃない… その日父は救急車で運ばれた。俺は部屋に閉じ込められてしまった 待っても待ってもは母は戻ってこなくて… もう…疲れた…

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