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遭遇

どうやって帰ってきたのかわからない…でも… 自分の荷物を持ち家を出た。 鍵は置いてきた。オートロックになっているからもう中には入れない。残っている荷物は茜が処分するだろう 今日作ったキーケースは未練がましく手紙と共に置いてきた スマホは茜を着信拒否した どうせ今日は帰らないのだから無駄なことだろうし居なくなったところで茜から連絡は来ないだろう 行く宛もなくふらふらと茜と過ごした場所を巡った 楽しかったことばかりが思い出されて涙は止まってくれない 明日のバイトはどうしよう…でも迷惑はかけられないし… 茜はテスト期間中だからバイトには入っていないからあそこで会うことはない… バイトにはちゃんと行こう…美空さんにも謝らないと… そして、明日バイトを辞めることをちゃんと伝えよう みんないい人で働きやすくてバイト代もよかったから勿体無いけれど… 「茜…ありがとう…ずっと側にいてくれて」 ポツンと呟いた。 その後はどこか泊まるところはないかとさ迷い歩いた 「さなえくん?」 あるホテルの前を通り過ぎたとき声がかかった 「璃人さん…」 俺の顔を見ると璃人さんは息を飲んだ 呆然としている俺の手を引き駐車場までそのまま連れていかれあれよあれよという間に車にのせられた 「璃人さん…あの…」 「家出?凄い荷物だけど。取り敢えず俺んちこの近くだから泊まっていきな」 そういえばこの辺りだった。一駅歩いちゃったんだ… 「でも」 「明日バイト先にも送っていってあげる」 弱っていた俺は素直に頷いた

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