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あたたかな人
璃人さんは何も言わずお風呂や食事まで用意してくれた
料理はどこかの高級レストランかと見紛うくらいに綺麗だった
「どうぞ。あったもので簡単に作ったからお口に合えばいいけど」
「あの…」
「ほら。あーん」
言われて思わず口を開けてしまった
いつも茜にされていたからつい…でもそういえば最近はそれもなかったな…
「おいしい」
「よかった。食べられるだけでいいから食べて」
どの料理も美味しくてさっきまで全く食欲が無かったのに全てたいらげてしまった
「ごちそうさまでした」
「お粗末様。よかった。食べられて」
「璃人さんは何でも出来ちゃうんですね」
「そんなことないよ。好きなことしか出来ないんだよね…よかった。少し顔色ましになったね」
「ありがとうございます…あの…」
「ん?」
「俺が家出した理由聞かないんですか?」
「話したければ話してくれていいしそうでないなら聞かないよ。俺はさなえくんがいい方がいい」
「あの…」
我慢できなくて茜のことを話した
また涙が溢れて…それを璃人さんが拭ってくれる
「すいません…。今日会ったばかりに人に…」
「大丈夫だよ。俺聞くの好きだし。頼られるの好きだし」
「ありがとうございます」
「で?このまま顔も見ないで別れていいの?」
「はい…でないと苦しくて」
「ん~…そう。でもさ後悔するかもしれないよ?それが本当でも直接別れを告げられなければ次にも進めないし。だから顔見て話しな。その準備が出来るまでここにいてくれていいし。俺どうせ独り身だし恋人もいないしね」
「そうですよね…本当に甘えてもいいですか?…」
「いいよ。なんなら夜のお相手もしようか?溜まるものは溜まるでしょ?そんだけ長いこと自慰すらしてないなら。なぁんてね」
「あははっ…」
思わず抱いてくれとせがむところだった…人の温もりがとても恋しかった
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