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あたたかな人

璃人さんにしがみつき璃人さんの胸に頭を押し付けた 「さなえくん。」 「や…」 「やじゃない。ほら顔あげて。ここにいるから。ね?」 「いかない?離れない?」 「うん」 しがみつく腕の力を弱めると璃人さんが優しく撫でてくれた そしてトントンと一定の早さで背中を叩いてくれる 涙が出る…昨日あれだけ泣いたのに…バイトの時は平気だったのに… 俺のすすり泣く声だけが寝室に響いていた 俺が寝付くまでずっと抱きしめ背中を叩く璃人さんの温もりが驚くほど心地よくて意識を手放した 「もう…本当…何でいつも気になった子には好きな人がいるんだろう…」 そんな呟きは俺には届かない 朝起きると隣はまだ温もりが残っていてさっきまで一緒に寝てくれたことがわかり何だか申し訳なさと嬉しさで感情がごちゃ混ぜだった 「おはよ。起きた?」 「おはようございます。すいません。昨日はわがままを」 「気にしないで。誰でもそんな日はあるでしょ」 いつものように璃人さんは笑っていた

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