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別れ話
茜が来たとき店はとても混雑していて挨拶すら出来ないままそれぞれで仕事をしていた。
後数時間で終わる。
別れのカウントダウンが刻一刻と過ぎていった。
バイトが終わり着替えていると茜もフロアから戻ってきた。蓮華は早めに上がったのでもうすでにいない
バックヤードに入ってくると茜はすぐに俺を抱き締めた
「離して。着替えられないから」
「さなえ…」
「離して」
茜は渋々俺の体を離すと自分も着替え始めた
「茜このあと時間ある?」
「ごめん…今日は無理」
「そう…じゃあいいや…ごめんね…」
「さなえ。何で急にあんな…」
「自分が一番わかってるでしょ?じゃあね。さようなら」
「さなえ!」
「時間ないんでしょ?愛しい人が待ってるよ。じゃ」
振り返ることもしないで店を出た。話なんて出来なかったし茜も話す気はないみたい…
何か…虚しいな…
今日は璃人さんに迎えはお願いしなかった。茜と話せると思っていたから
「もう…意味ないじゃん」
タイミングよく璃人さんから連絡がくる
「ごめん!今一緒だよね!」
「いえ…用があるって話し出来なかったんでこれから帰ります。」
「はぁ?迎えに行く。今店の近くだから」
大人しくそこで待つことにした…
「お疲れ様。さなえくん。うわ…すごい顔…」
「ははっ…もう俺との時間も作りたくないんですって…茜は…」
車に乗った途端涙が溢れて止まらなかった
「話しさえさせてもらえないなんて…」
「さなえ!!」
窓が開いていたので外の声が聞こえた
茜だ
「そういうことね。相手が出来たからあんな…だったらちゃんと言ってくれれば良かったじゃねぇか!」
「は?」
「他にいるって言ってくれれば!」
「何いってるの?!それはお前の方だろ!!」
「ふざけんな!」
「こっちの台詞だよ。俺と話すより大事な人が待ってるんだろ!早く行けよ」
「こらこら…二人とも落ち着いて。茜くん。取り敢えず乗る?話しちゃんとしな」
「茜は人が待ってるんです。早く行けよ」
ちょうどいいタイミングで茜の着信が響く
「ほら。出なよ。じゃあね。璃人さん!出して!早く!」
「すいません!今日は無理です。また」
茜はすぐに電話を切った
「お前何やってんの?その人傷つくじゃん」
「うるせーお前以外どうだっていい」
「はぁ?ふざけるのもいい加減にしろよ!」
「おい!!お前ら!!」
璃人さんのドスの聞いた声が俺たちを黙らせた。
初めて聞くその声に言葉を失った
次の瞬間にはいつもの璃人さんに戻り優しく語りかける
「あのさ…二人とも落ち着いてちゃんと話しなよ。お互い何かおかしなことになってそうだけど?家まで送るから乗りな。あ。場所教えてね。なんなら俺見届け人になるけど?」
俺たちとは対照的に笑いながらそう言う。
「誰かいないとこじれそうだし無理矢理付いていくわ」
車の中は静かだった。久しぶりの茜との部屋に足が動かない。
璃人さんに促され重い足を引き摺るように茜に続いた
一先ずリビングのソファーに腰を下ろす。
また部屋は荒れていた
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