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瑞季side
「藍から聞いてる?一年前俺たちに何があったのか」
「聞いてる」
「俺ね最初のうち蒼じゃないと触られるのも近付かれるのもダメになったんだ」
静かに俯き俺の話に耳を傾ける圭を見つめながら話す。
「でも…蒼のお陰で今はすっかり平気になったんだ。だからね…蒼を…解放してあげたい…」
溢れそうになる涙をこらえる。
「蒼が本当は藍のことが好きだって俺は気付いてた。もちろん圭翔の気持ちもね。」
「…」
「け…い…しょ…う…」
無言のままの圭翔を見ると俺が紡ごうとした言葉を予感したのかボロボロと涙を流していた。圭翔は底抜けに明るい奴という認識をしている。
優しくて頼り甲斐があって爽やかな笑顔でとてもモテる。
そんな圭翔の初めて見る姿に胸が締め付けられる…わかってる…圭翔がとても藍のことが好きだってこと…わかってた…でも…
「藍を解放してって…ことでしょ…?」
「うん…それが二人にとって…そして俺たちにとって一番いい方法だって…思って…」
「藍は…こっちに、戻らないかもしれない…今ね親父さんが仕事の関係で遠方へ行くから…藍も着いていこうかって悩んでる……藍は付いていくと思う…多分その前に俺は藍に別れを告げられるって…思ってる…だから…俺が解放してあげても…蒼に行くということは…ないかもしれない…蒼への想いを持ったまま…それを告げることもなく…離れようとしてると思うんだ…きっと…蒼に行くなって言ってもらわないと…そうなる…だから…蒼を…先にどうにかしないと…蒼は気付いてないでしょ?自分の本当の気持ちに…御木本…お前は…平気なの?」
「平気なわけ…ないじゃん…俺は蒼の事大好きだし…本当は離れたくなんかない…このまま蒼が気付かなきゃいいって思ってる…でもさ…俺を通して…藍を見ているあの視線にはもう…耐えられそうもないよ…」
ガタイのいい男が二人して涙を流す光景はハタから見たらとても異様だろう…
でも止めることは出来なかった…
「圭!!」
その時扉が開きそちらをみやる
そこには息を切らした藍がいた
「どうしたの?…二人で…」
訝しげにこちらを見る藍。
「大丈夫?」
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