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藍瑠side
九州にやって来た。
相変わらず父は忙しくて家に戻ることは少なかった。
新しい高校にはなかなか馴染めず一人で過ごしていた。
ただぼんやり高校生活を終え大学へ進学したある日…
父が死んだ…自殺…だった…
父は騙され…借金を抱えた。どうにもできなかったはずなのに俺にはそれを微塵も感じさせず只管働いていた。
父の自殺はまさに晴天の霹靂で俺は何も出来なかった。
その時やって来た男…借金を肩代わりしてくれた。
もう自由になっていいってお金は返さなくていいって言われたけれど一人で生きていける自信もないし何も返さないのは申し訳なくてその人が何者で何をしてる人なのかを聞いた。
始めは口を固く閉ざしていた彼は根負けし話してくれた。
俺にはもう誰もいない…自分で手放した蒼や圭くんにもう合わせる顔もないし正直自分のことなんてどうでも良かった。
だから自らこの身を見知らぬ男たちに捧げることを選んだ。
その人…オーナーはとても苦しそうにしてた…オーナーはいくつか会社を持っていて仕事の関係で父に出会い男手1つで子育てをしそれでも明るく仕事も良くでき優しい父にいつしか心を奪われていたそうだ
…でも自分の性癖を父には明かせず想いを告げることもしなかった。
父はいつも笑っていたので誰もが騙され借金を抱え悩んでいるなんて気付かなかった。
オーナーは何かあったんじゃないかと察していたものの敢えてそこを指摘しなかったことを悔いていた。
「私が…変化をちゃんと…指摘してたら…そうしたら…救えていたかもしれないのに…藍瑠くん…本当にすまない…」
「…仕方ない…もう父はいないし…俺には身寄りがない…ねぇ、オーナー俺を雇って?そうだな…うん…あのお店がいい…俺…男に必要とされたい…俺もね…男の人が好きなんだ…だから…俺を生かしてくれるのならそこで雇って?」
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