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通された場所は事務所だと思う。 でも想像していたのとは違い、いいホテルの一室のような場所だった。 「掛けて」 「はい」 促されソファーにかける。 体が程よく沈み混むソファで心地よい 「コーヒーでよかったかな?」 「いえ…お構い無く」 カップを二つ持ってきて俺の前に置く 「綺麗だねぇ。君」 「あ…いえ…」 「俺の知り合いに似てる」 「え?」 「高校時代の恩人にね。」 「高校はどこだったんですか?」 「神楽高校だよ」 「俺の先輩ですね」 「…木築 茜教授…知ってる?」 「それ…俺の父です」 「やっぱり?君を見て名前聞いてそうじゃないかと思った。すごくきれいな人だったから忘れたことないよ。俺昔から見た目これで何もしてなくても不良というレッテルが張られていたんだ。ある日学校の窓ガラスが割られていてね。その前日から3日くらい俺体調崩してて休んでたんだけど割った犯人にされちゃって危うく退学処分になるところだったんだ。どんなに否定しても誰も信じてくれなくてもうどうでもよくなったときたまたまその日講演会のために来ていた木築教授が通りかかって庇ってくれたんだ。見ず知らずの俺をだよ。ビックリしちゃった」 父らしい行動。父は以前色んな思い込みから悩んだ時期があったらしくそれからはちゃんと真実がわかってから行動することにしたそうだ。 「たまたま来ていただけの人に反感を持つ人も沢山いたのに冷静に話し対処してくれた。それだけじゃなくて真犯人も見つけてくれた。 俺は教師たちに謝罪されその時から回りの視線が変わったんだ。生きにくかった学校で俺の居場所ができたのは木築教授のお陰だよ。今でもとても感謝しているんだ。木築教授があの日庇ってくれなければ俺は今こうして生きていることはなかったかもしれないから」 「向こうへ戻ったら父に伝えておきます。今でも感謝していたと。」 「御劔 飛鳥って言ってもらえればわかる。真咲は俺がここでキャストとして働いていたときの源氏名だから真咲じゃわかんないから」 「わかりました」

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